2022年度は,前年度に構築したプラント周波数応答関数(FRF: Frequency Response Function)推定における出力センサの量子化誤差や雑音によるFRF推定誤差低減手法を実験システムに実装し,その有効性を産業用精密サーボ機構であるガルバノスキャナを対象として評価した。また,提案FRF推定に基づく線形モデルベースフィードフォワード(FF)制御の有効性を実験により評価した。 1. プラントFRF推定手法の実験評価 量子化や雑音によるFRF推定誤差の低減手法として,(a)出力センサの高逓倍率化,(b)出力オーバーサンプリング,(c)FRF補正アルゴリズムの3手法を実験システムに実装し,実験評価を行った。各手法単体の評価では,2021年度のシミュレーション結果と同様に,(a)と(c)はFRF推定誤差の低減効果が高く,(b)の効果は極小であった。一方,組み合わせとしては(a)と(c)の組合せが最良であったが,費用対効果を考えるとアルゴリズムの追加のみで高精度なFRF推定が可能な(c)単体が最良と結論付けた。 2. 提案プラントFRF推定に基づく線形FF制御の有効性検証 (c)に基づく推定プラントFRFに対するパラメトリックモデル同定手法として,自動的かつ効率的なパラメータ同定を可能とするために遺伝的アルゴリズムと最小二乗法を組み合わせた協調型最適化による同定手法を構築した。線形モデルベースFF制御器を設計し,ガルバノスキャナの位置決め制御実験に適用した結果,提案FRF推定に基づく線形FF制御は非線形要素に対する複雑なモデリングを必要とせずに高速・高精度な位置決め性能を実現し,その有効性が検証された。 また,本研究による一連の研究成果を非線形摩擦を有するテーブル位置決め装置に応用し,研究成果の一般性を確認した。
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