本プロジェクトの最終年度である2022年度では,得られている成果の論文発表を進めるとともに,後継のプロジェクトへ研究がつながることを目指して研究活動に取り組んだ.まず,確率系の動特性がi.i.d.過程により決まる場合において,H2性能と呼ばれる制御性能を特徴づけるLMI条件を導出した成果が IEEE Control Systems Letters に掲載された.H2性能を考慮することにより,確率系に対しても外乱の影響を抑制した制御器設計が可能である.この他,通信遅延がランダムであるようなネットワーク化制御系への提案手法の適用について IEEE Conference on Desicion and Control 2022 で発表した.同成果は自動車の遠隔型自動運転などにも活用でき,別途検討を進めている.この他にも,基礎理論の非線形系への拡張などについて検討を行い,一定の成果を得ている. 研究期間全体では,まず2021年度に IEEE Transactions on Automatic Control へ掲載された成果を得ることができたことが非常に大きかった.これにより,提案手法の基礎を築くことができた.加えて,2020年度に発表したランダムポリトープに関する成果や,2022年度に発表したH2制御に関する成果により,理論に横の広がりを持たせることが可能であることが明らかとなった.また,応用方向へは,ネットワーク化制御系への活用が1つの有望なフィールドであることがわかった.これらの成果は,提案する確率制御手法の,将来的なさらなる発展に寄与するものと期待している.
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