本申請課題では,制御実行時の観測情報を基に,制御対象の特性変動を高精度に推定・予測し,制御システムの安定性を保ちつつ,制御性能の最適性を保持し続けることを可能とするモデル予測制御アルゴリズムを構築することを目的とする.2022年度に,線形パラメータ可変(LPV)システムとして記述されたシステムについて,入出力データから状態と可変パラメータを推定する手法を構築した.構築した推定アルゴリズムは,凸二次最適化の反復計算に帰着されている.また,最適化変数を削減する手法も構築した.以上の性質より,推定値を効率的に得ることが可能である.この成果については,IEEJ Transactions on Electrical and Electronic Engineeringへの採録が2024年5月1日に決定している.2023年度は,この手法を,実際の電気自動車に適用し,自動車の横滑り角とコーナリングスティフネスの同時推定実験を行った.これらのパラメータは車両運動制御において重要ではあるが,センサにより直接計測することは難しい.提案手法を用いることにより,標準的な慣性センサから得られる観測情報をもとに,これらの量を推定できることを確認した.この推定法を,2022年度に構築したLPVシステムに対するモデル予測制御アルゴリズムと組み合わせることで,本研究プロジェクトの最終目的である「制御実行時の観測情報を基に,制御対象の特性変動を高精度に推定・予測し,制御性能の最適性を保持するモデル予測制御アルゴリズムを構築すること」を達成できる.また,これとは異なるアプローチで,LPVシステムへの入出力データから,フィードバック系を安定化する制御器を直接設計する手法を構築し,2023年度自動制御連合講演会において発表済みである.
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