タワークレーンの制御には、安全性を維持し、高速・正確な吊り荷の位置決めを実現しつつ、過渡時の吊り荷の振動と残留振動を抑制することが重要であるが、その滑車の並進運動とアームの回転運動のみで、非駆動である吊り荷の位置決めと揺れの制御に多くの挑戦的課題がある。本年度では、以下の主な研究成果を挙げている。 1. タワークレーンを対象に、駆動・非駆動変数からなる複合信号を用いた軌道追従制御則を設計するとともに、その制御則でのクレーンの動きを解析し、軌道追従制御目的が達成できることを明らかにした。また、実機実験により、提案した制御則がペイロードの揺れを抑制し、ジブの位置決めを有効に行えることを示した。 2. 中間関節のみが駆動である2リンクの劣駆動ロボットを対象とし、その非線形動特性を活かした振れ止め非線形制御則を提案するとともに、その制御則下でのロボットの動きを大域的に解明し、閉ループ系の代表極の実部が最小となるような制御ゲインを求める問題を解決し、劣駆動ロボットのすべての機械パラメータに使える解析解を示すとともに、その提案則の有効性と閉ループ系の性能限界を明らかにした。 3. 不確実性を伴う二つの関節を持つ回転倒立振子システムのバランス制御に対して、以前にサンプルされた項とその変動をモデル化し、新たなアプローチである修正信号補償ベースのバランス制御を提案している。信号補償ベースのバランス制御を最適化し、重大な安定性問題を回避し、閉ループシステムの性能を解析している。数値シミュレーションと比較実験により、摩擦やシステムのモデリング誤差に対するこのアプローチの有効性と強いロバスト性を示している。 本研究では、ワークレーンの非線形制御則の設計・解析、ならびに実機検証を行っていた。また、得られた研究成果は、多くの重要な国際学術雑誌に論文として発表されている。
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