ウィンドファーム全体の発電量を最大化するための制御系設計に利用可能な,複数風車からなるシミュレータ環境の構築を目指してきた.本研究でその確立を目指すウィンドファームの解析法と制御器実装のためには,単体風車のシミュレータに可能な限りシンプルな構造をもたせることがキーとなるポイントであった. 最終年度で実施した研究の成果として,複数の風車を複合した大規模ウィンドファームの解析に向けたシミュレータ環境を実現し,様々な波や風の条件下で,風上に位置する風車が他の風車の発電量に及ぼす影響について,詳しく調査を行った.同時に,ウィンドファーム間の流体現象を可視化することに成功し,定量的にも定性的にも評価可能なウィンドファームのシミュレータ環境を構築することができた. 今後はより大規模で複雑なウィンドファームへ拡張することが重要である.本研究の成果に対して,現実のウィンドファームでの制御系設計に役立つシステムへ規模を拡大することは比較的に容易であり,複雑な物理現象を伴うウィンドファームの解析や制御系設計のツールの確立に道筋をつけたと言える.さらに,本研究で構築したシミュレータ環境を用いて,多様な環境下での入出力データを取得することが可能となっており,各種のシステム同定手法を土台としてウィンドファームの数理モデルを獲得することが期待される.これによって得られた数理モデルは,複雑なウィンドファーム内の物理現象の本質を捉えるダイナミカルシステムであり,ウィンドファーム内の複数風車に対するフォーメーション制御器設計において,従来のモデルに基づいた様々なアドバンストな制御系設計手法の適用可能性を広げることに繋がっていく.
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