研究課題/領域番号 |
20K04562
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
今田 早紀 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 准教授 (30397690)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 無極性Ⅲ族窒化物薄膜 / 窒化アルミニウム / 深紫外発光ダイオード / シード層 / スパッタ法 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ウルツ鉱型AlN薄膜がFe添加によってa軸単軸配向するその機構を解明することを目的としている。研究期間(3年間)の1年目には、成長初期の核発生およびその後の単結晶成長期それぞれの、基板種依存性を詳細に調べた。特に、深紫外発光素子形成用シード層として応用する観点から、導電性Si(100)を基板とした。 これまでの絶縁性基板(石英ガラス基板および酸化アルミニウム単結晶基板)などの絶縁性基板を用いた場合と同様に、Si基板上にもウルツ鉱型無極性(a軸配向)AlFeN薄膜が形成できることが明らかになった。高強度X線回折法により、成長初期にγ-アルミナ層が形成されることを初めて見いだした。これは、透過電子顕微鏡観察でも確認できた。このγアルミナ層が形成された後、微結晶AlFeNができ、そのなかからa軸配向した単結晶粒が選択され、そのサイズが拡大して柱状構造をとること、一定Fe濃度以上でa軸配向単結晶柱の柱径が成膜時間とともに拡大することを、透過電子顕微鏡観察により明らかにした。また、AlおよびNのK吸収端におけるX線吸収端微細構造測定により、このa軸配向単結晶柱の柱径拡大とともに、極性軸であるc軸方向特有の電子状態が面内方向に現れることを明らかにした。この成果は、英国王立化学会のMaterials Advancesに掲載された。さらに、これらの成果について、大型放射光施設SPring-8スペクトロスコピー研究会で依頼講演を行った。 また、750°までの高温で成膜が可能な装置への改造が完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の成果として導電性Si基板上へのa軸配向膜が可能であること、単に結晶学的に無極性であるだけでなく、バンド構造的にも無極性であることを実験的に明らかにし、これらをまとめ、論文掲載に至った。また、750°までの高温で成膜が可能な装置への改造が完了し、現在、成膜実験を推進している。 a軸配向領域拡大の結晶学的、電子構造的メカニズムの解明のための、高強度X線回折測定、軟X線領域のX線吸収端微細構造測定およびこれらの理論計算による解析法を確立した。また、第一原理電子状態計算のコードのひとつであるFDMNESを用いた遷移金属元素K吸収端X線吸収スペクトルの理論計算を行い、実験スペクトルがよく再現できることを見いだした。このFDMNESでは、最近、特定の元素周りの共有結合電荷計算が可能になった。これを用いて、Fe原子周りの共有結合電荷の評価計算を実行し、無極性成長メカニズムの理論的なアプローチを開始している。
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今後の研究の推進方策 |
750度までの成膜温度依存性を詳細に調べ、Feが膜中に取り込まれることがa軸配向発現に重要なのか、あるいはFeが成長表面に存在することが重要なのかを実験的に解明する。 さらに、FDMNESを用いた共有結合電荷計算を推進し、無極性成長メカニズムの理論的解明を目指す。
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