研究課題/領域番号 |
20K04565
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
松浦 秀治 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (60278588)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | p型4H-SiC / IGBT / Al添加4H-SiC / XRD分析 / NNH伝導 / Hall係数 / Hall係数の符号反転 |
研究実績の概要 |
SiC半導体を用いたnチャネルInsulated Gate Bipolar Transistor (IGBT)のp型4H-SiC基板(コレクタ)の低抵抗率化のためには、アクセプタであるAlを高濃度添加する必要がある。そこで、Alを高濃度添加した場合の伝導機構を調べた。低温領域での電気伝導機構はホッピング伝導機構であり、Al濃度の増加に伴って、最近接ホッピング(NNH)伝導から可変領域ホッピング(VRH)伝導に変化することがわかった。XRD(X-ray diffraction)測定を行い、XDRの半値幅とAl濃度との依存性から、Al濃度が増加するのに伴い、半値幅が増加することがわかった。つまり、Al濃度と共に、4H-SiC結晶の格子間隔に場所的な揺らぎが大きくなることを明らかにした。このことから、4H-SiC結晶の周期性に乱れが生じ、禁制帯中に局在準位が形成され、フェルミ準位付近に形成された局在準位を伝導するVRH伝導が現れるようになったことがわかった。 さらに、バンド伝導領域ではホール係数が正を示し、p型半導体であることが示されたが、低温領域でのNNH伝導やVRH伝導のようなホッピング伝導では、p型半導体であるにも関わらず、ホール係数が負(つまり、n型の性質を表すよう)になることが実験的に明らかにした。そこで、NNH伝導とVRH伝導に適用できる、ホッピング伝導でのホール係数の符号に関する一般的な物理モデルを提案した。電界によるホッピング伝導は電子で考えても正孔で考えてもよいが、磁場により力を受けた荷電粒子が移動する先の大小関係により、磁場によりホッピングする荷電粒子が電子か正孔かが決まり、ホール係数の符号が決まることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
IGBTのコレクタとなるp型4H-SiC基板を、Al濃度が2.4×1019から4.7×1020 cm-3の範囲で、CVD法で成膜した。すべての試料で、高温領域ではバンド伝導であることがわかった。一方、低温領域ではホッピング伝導であることがわかった。しかし、Al濃度が2.4×1019から1.5×1020 cm-3ではNNH伝導であり、Al濃度が1.8×1020から4.7×1020 cm-3ではVRH伝導であることがわかった。このようにホッピング伝導が変化する理由は、Siより共有結合半径が大きいAlを添加することにより、SiC結晶にひずみが生じ、禁制帯中に局在準位が多く形成されたためと推測できるが、このことを実証するためにXRD分析を行い、Al添加と共にSiC結晶の周期性が乱れるために禁制帯中に局在準位が形成されることを明らかにした。 Al添加したp型4H-SiCにおいて、ホッピング伝導である低温領域ではHall係数は負を示し、あたかもn型半導体であるような結果を示した。そこで、ホッピング伝導でのHall係数の符号に関して、NNH伝導でもVRH伝導でも適用できる一般的な物理モデルを構築し、p型半導体でもホッピング伝導でHall係数が負になることを明らかにした。 さらに、申請時には予想していなかったが、XRD分析により、SiC結晶の周期性の乱れとVRH伝導との関係を明らかにできたので、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
抵抗率の温度依存性とホール係数の温度依存性を比較・検討し、共通点を見つけ出す。そして、NNH伝導での抵抗率の温度依存性とホール係数の温度依存性から求められる活性化エネルギーが等しくなることを説明できる物理モデルを構築する。 Al添加4H-SiCをエピ成長させるn型4H-SiCのオフセット角とエピ膜の抵抗率、ホール係数、正孔濃度、正孔移動度、活性化エネルギーとの関係を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度必要な購入を行いつつ、427,116円を残し、次年度に新たに成膜するAl添加4H-SiC膜中の正確なAl濃度をSIMS測定するために使用する。
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