研究課題/領域番号 |
20K04567
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研究機関 | 鶴岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
森谷 克彦 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90509671)
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研究分担者 |
田中 久仁彦 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (30334692)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 透明塗布型太陽電池 / 透明p型半導体 / 銅ハライド化合物 / 非真空プロセス / 価電子帯制御 / 低コスト / 環境調和型半導体 / 生活環境改善 |
研究実績の概要 |
本研究は透明p型半導体材料として,資源戦略的に優れたCuI_(1-X)I_X(CuICl)薄膜を非真空プロセスで作製し,その物性(バンドギャップ(Eg)、伝導帯の下端(E_CBM)、価電子帯の上端(E_VBM))の組成依存性を明らかにし,透明p型半導体としてのポテンシャルを確立するとともに,これらの物性を活かした透明塗布型太陽電池を実現することを目標としている. これまでの研究成果は以下のとおりである. 各組成におけるCuIClの物性評価を行った.その結果,バンドギャップは混合比Xが1.0から0.8では徐々に減少し、Xが0.6から0.0にかけて増加するという結果が得られた.また,イオン化ポテンシャル測定では,混合比Xが大きくなるにつれ,測定値が大きくなった.得られた結果より,透明pn接合を形成し,発電を目標に研究を行った.その結果,p型半導体CuIClとn型半導体ZnO:Alの積層構造は構築できるものの,発電には至らなかった. 原因として,「p型半導体CuIClとn型半導体ZnO:Alの適切な熱処理条件が異なる」,「塗布溶液に用いる溶媒が同じである」,この2つが考えられたため,昨年度は熱処理条件と用いる溶媒の変更に焦点を当て研究を行った.その結果,溶媒においては同一溶媒でも条件によって積層は可能であることが分かった.しかしながら,各層の必要な熱処理条件が大きく異なることから最適な条件を見出すことはできなかった.また工業化を視野に入れ,物性評価用に用いていた石英基板をより安価なソーダライムガラス基板に変更した.その結果,アルカリ成分を多く含む基板とほとんど含まない石英基板ではその物性に変化が見られた. これらの結果は,CuICl薄膜を使用した透明塗布型太陽電池の作製に役立つと期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,①CuIClにおける物性(Eg、E_CBM、E_VBM)の組成依存性を調査する,②透明pn接合を形成する,③透明塗布型太陽電池を実現する,ことを目的としている. 現段階では,①は達成している(一昨年度の研究実績参照).しかしながら,②において,p型半導体CuIClとn型半導体ZnO:Alの積層構造は構築できるものの,発電には至っていない. 昨年度は熱処理条件と用いる溶媒の変更に焦点を当て研究を行った.その結果,溶媒においては同一溶媒でも条件によって積層は可能であることが分かった.しかしながら,熱処理条件を変更したところ,各層の必要な熱処理条件が大きく異なることから最適な条件を見出すことはできなかった.また工業化を視野に入れ,物性評価用に用いていた石英基板をより安価なソーダライムガラス基板に変更した.その結果,アルカリ成分を多く含む基板とほとんど含まない石英基板ではその物性に変化が見られた.
以上のように,新たな知見は得られたものの,申請時に設定した目標を実現することができなかったことから,やや遅れているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
現時点では一昨年度同様,CuICl薄膜をp型,ZnO:Al薄膜をn型とした積層構造を構築したものの,発電には至っていない. p-CuICl薄膜およびn-ZnO:Al薄膜の各単層膜のみにおいては最適な熱処理条件は得られたものの,積層構造による最適な条件を得ることはできなかった.また,各層の作製条件の見直しを行う中で,基板に含まれるアルカリ成分により,CuIClの物性が異なることが確認された. 今年度は雰囲気制御も含めた熱処理条件の最適化を行う.また,昨年度に得られた基板による影響を明確にするために,石英基板とソーダライムガラス基板の比較を行う. さらに,研究期間内に積層構造を構築し,整流特性が取れ次第,デバイスとしての高効率化を図る予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響もあり,旅費に充てられた予算の執行が難しくなった.そのため,予算が残っている.次年度の状況にもよるが,コロナ禍の影響も徐々に薄れ,現地開催の学会等も増えてきていることから,次年度使用額として残った予算は,旅費もしくは消耗品(試薬,ガラス基板等)に充てる.
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