研究課題/領域番号 |
20K04568
|
研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
仙波 伸也 宇部工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (40342555)
|
研究分担者 |
浅田 裕法 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (70201887)
佐藤 仁 広島大学, 放射光科学研究センター, 准教授 (90243550)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 相変化 / 不揮発性メモリ / 結晶化温度 |
研究実績の概要 |
次世代不揮発性メモリとして、アモルファス-結晶間の相変化に伴う電気抵抗の差を利用した相変化メモリに注目している。現在の相変化材料に対する主要な問題点として高書き換え電力及び低データ保持性能が挙げられる。改善策として、相変化材料に遷移金属元素を添加し、アモルファス相における原子間結合を強固化することによって結晶化温度を上昇させることを提案している。 本研究では、高いMn固溶性と良好な結晶性をもつGe1-xMnxTeに着目し、結晶化温度と電気抵抗変化に対するMn添加効果を調べるとともに、T型構造をもつデバイスを作製し、相変化メモリ材料としての機能性について検証することを目的としている。 2021年度には、これまでMnとTeの独立したKセル蒸着源を使用していたところをMnTeの蒸着源に切り替えて制御パラメータを減らす工夫を施した。石英基板上に室温で種々のMn濃度を有するアモルファスGe1-xMnxTeを成膜し、その抵抗の温度特性から結晶化温度を評価した。更に、電極間のギャップ長を変えた細線素子を作成して、パルス印加による結晶相からアモルファス相へのスイッチング制御を試みた。測定システムについてはパルス信号発生器、オシロスコープ、高感度電流増幅アンプを組み合わせたオリジナル仕様を構築した。また、有限要素法による電界/熱伝導特性のシミュレーション実験を行い、簡易型の相変化メモリ素子の構造とその寸法について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1.Mn組成の調整については、Kセル蒸着源をGeTeとMnTeの2つにすることで制御性を改善することができたが、超高真空装置の基板加熱機構に不具合が生じ、試料作成に遅れが生じている。 2.T型メモリ素子については、リソグラフィーによる微細加工のパターン及びプロセスまでは検討できたが、上記1により成膜が遅れたので、加工についても遅れている。 3.研究計画では、広範囲なMn濃度をもつ試料に対して価電子及び内殻の電子状態観測を行うことで結晶化温度のMn依存性を電子状態の観点から考察することとしている。その実験は研究分担者所属の実験設備を使用する計画であったが、コロナ禍の影響によって移動が制限されたために、計画通りに実現できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
試料製作について、当初の予定を変更し、GeTeとMnTeの2つのKセル蒸着源を用いてアモルファスGe1-xMnxTeを成膜することとし、幅広いMn組成の試料を成膜する。 2021年度に自作の計測システムを用いて、結晶相からアモルファス相へのスイッチング変化を初観測することができた。今後はその要件の詳細を定量的に評価できるように発展させて、当初の目的であるMnをドープしたことによるスイッチン特性の変化を明らかにする。 メモリ素子の作製については、2020年度提案した要素技術としてのヒーター部と相変化膜をシーケンシャルに作製する手法を用いて、素子の試作を進める。試作のポイントは円柱状ヒーターの断面積サイズをどこまで小さくすることができるかである。 スイッチング特性の評価については、導入した電流アンプの帯域が足りず、高速パルス電流波形が鈍る結果が見られているので、2022年度に広帯域電流アンプを購入して波形の捕捉を実現する。 Mnドープの効果ついては、X線光電子分光による内殻ピークのケミカルシフト並びに相対強度の分析から化学結合状態並びにMn組成について考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で移動が制限されたので予定していた学会と研究打ち合わせの旅費が繰り越される。また、光電子分光実験の環境整備が進まず、その消耗品購入経費も繰り越される。繰り越される予算については2022年度に実験環境の整備費と打ち合わせ経費に充当する。
|