本研究では相変化メモリ材料の結晶化温度の高温化を目的としている。ターゲット材料はⅣ-Ⅵ族化合物GeTeであり、遷移金属元素Mnをドープすることによって原子間結合を強くし、結晶化温度の高温化を実現する可能性を検証した。 超高真空蒸着装置を用いてEagle-XG基板上にGeTeとMnTeの2つの蒸着源を用いてアモルファス相のGeTe/MnTeを成膜した。成膜条件として蒸着時間と照射蒸気圧の比率を調整し、膜厚やMn含有量を制御した。 成長した薄膜試料を加熱することによって、温度変化に伴う抵抗値の変化をデジタルマルチメーターの2端子法にて測定した。続いて加熱後の試料の構造評価をX線回折にて行った。さらにエネルギー分散型X線分析(EDX)にて試料の元素の含有量の測定を行った。これらの結果を総合してMn含有量に対する結晶化温度の変化を調べた。 各薄膜試料の抵抗の温度特性の測定結果では、初期は温度上昇に伴うキャリアの増加に起因した抵抗値の減少が確認されたとともに、200℃前後で結晶化による急激な抵抗の減少がみられた。この抵抗値が急激に下がり初めた温度から結晶化温度を評価し、試料のMn含有量との関係を明らかにした。ノンドープのGeTeの結晶化温度180℃に対して、Mn含有量が12%、20%、32%、45%の試料の結晶化温度は192℃、194℃、201℃、210℃と上昇することが確認できた。ただし、X線回折による結晶構造の解析では、いずれの試料でもGeTeにMnがドープされた混晶半導体Ge1-xMnxTeの回折ピークを観測することはできていない。本研究での狙いは、Ge1-xMnxTeに混晶化することによって原子間結合が強化され、結晶化温度が上昇することであり、結晶化温度上昇の起源については更なる調査が必要となる。
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