研究課題/領域番号 |
20K04572
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
森武 洋 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 教授 (90531799)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | NRDガイド / テラヘルツ波 / ネマティック液晶 / 可変移相器 |
研究実績の概要 |
NRDガイド型の液晶装荷テラヘルツ波移相器を実現する際、液晶を所望の位置に充填するため、高分子フィルムのスペーサが必要となる。このスペーサ部分もテラヘルツ波が伝搬するが、この部分は電界を印加しても誘電率は変化しないため、移相器の位相変化量を下げる要因となる。そこで、電磁界シミュレーターを用いてNRDガイド内の電界分布を計算し、テラヘルツ波の電界成分がNRDガイド中央部に集中していることを確認し、スペーサによる位相変化量の低下が抑えられることを明らかにした。 また、溶融型の3Dプリンターで作製可能な高分子材料のテラヘルツ波の透過特性を測定し、ポリエチレン(PE)が低損失であることを確認し、NRDガイドの誘電体材料として適切であることを見出した。更に、テラヘルツ波は一般的には方形導波管から出力されることから、方形導波管-NRDガイドの変換器を設計し、変換ロスを抑えて方形導波管中を伝搬するTEモードとNRDガイド中を伝搬するLSMモードを変換できる変換器を提案し実際に作製した。 実際に方形導波管-NRDガイド変換構造を有する液晶装荷テラヘルツ波移相器を作製し、移相器の応答特性や透過特性の測定を行ったところ、現状ではシミュレーションの結果に比べて損失が大きく、テラヘルツ波に対して比較的低損失であるポリエチレン(PE)を用いても、現状では線路長が長く、ポリエチレン中を導波する際の損失が大きいことが確認できた。損失の低減のため変換器構造を見直し、線路長を抑えた移相器を実現することが移相器の低損失化には必要であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で明らかにするとしていた3点の内の2点である配向ナノファイバーを充填したNRDガイド型テラヘルツ波移相器の実現とその特性評価、及び移相器と接続するNRDガイドの誘電体材料の選定が実現できたため、順調に進展していると判断される。 一方、NRDガイドの誘電体材料として低損失なポリエチレン(PE)を用いても、現状では線路長が長いため伝搬中の損失が大きいことが確認されたため、この部分の改善という新たな課題が生じたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究で明らかとなった方形導波管-NRDガイド変換部での誘電体線路における損失を抑えるため、より短い変換部を提案できるように検討を行う。また、当初の目的の残された一つである損失の低いナノファイバー材料の選定を行う。 上記を実現し、フェーズドアレーアンテナ実現に向けて、入力されたテラヘルツ波の分配器などを設計し、実際にテラヘルツ波の分配が可能であるか実験により検討を行う。更に、可能であれば本年度中に実際のフェーズドアレーアンテナの試作を行い、損失や特性の評価を始める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については、本年度3Dプリンターを購入する予定であったが、3Dプリンターで使用する高分子材料の選定が完了しなかったため、来年度高分子材料の選定完了後に購入する予定である。また、今年度は参加を予定していた国内学会、国際会議の全てがコロナウイルス感染症のためオンライン開催又は中止となり、国内旅費、外国旅費とも執行されなかった。来年度もコロナウイルス感染症の影響は続いており、国際会議には参加できない可能性もあるため、一部の外国旅費、国内旅費は物品費やとして使用する予定である。
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