研究課題/領域番号 |
20K04574
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
岡本 大 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50612181)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SiC MOSFET / NBTI / 信頼性 / しきい値変動 / MOS界面 |
研究実績の概要 |
シリコンカーバイド(SiC)を用いた電力変換素子は、2050年カーボンニュートラルを達成するための必須技術である。本研究では、SiC MOSFETで問題となっている負のゲートバイアス印加時のしきい値電圧不安定性(NBTI)の原因を特定することを目的とし、評価手法の検討と素子作製プロセス依存性についての調査を行っている。2年目である令和3年度においては、デバイスのNBTI特性の評価手法の確立についての検討を主に行い、以下の成果を得た。まず、pチャネルSiC MOSFETに対して、高速I-V測定装置を用いたOn-the-fly測定によって負バイアス時のしきい値電圧測定を行う手法を検討した。その結果、これまでに考慮されてきていなかったストレス印加時のgm変動を考慮しなければ、On-the-fly法では誤差が大きくなることを明らかとし、それを補正する手法を提案した。これまでの手法では測定できていなかった100 nsオーダーの短時間領域のしきい値電圧変動測定が可能となり、これを基にしきい値変動メカニズムの議論を行うことができた。次に、ストレス印加によって新たな界面準位が生成されるのかを検証するため、On-the-flyチャージポンピング測定を用いたSiC MOSFETの評価に取り組んだ。測定プログラムを自作して測定を行い、負バイアスしきい値印加時に新たな界面準位が生成されていく様子を観察することができた。これらの成果は論文として掲載され、国際会議での招待講演を1件行うことができた。これらの成果を基に、最終年度である令和4年度においても、引き続きNBTIメカニズムの解明と理論の体系化に取り組んでいく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和3年4月に研究機関の変更があったため、かなりの時間のロスがあったものの、そのロスを取り戻すべく環境整備と実験を精力的に行った。新たに10000 sまでのNBTI特性を測定しており、新しい実験結果が得られている。一方で、産総研で測定を行うことを計画していた別の測定手法については、コロナウイルスの影響により、出張ベースでの測定を断念したものもある。しかし、令和3年度中に行なう予定であった研究計画は、一部計画変更はあったものの、おおむね遂行できたと考えられる。学術論文への掲載や国際会議での招待講演1件など業績も増えつつあり、令和4年度においてもさらに1件国際会議での招待講演を依頼されている。以上の理由から(1)当初の計画以上に進展していると評価した次第である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに改良高速On-the-fly法とOn-the-flyチャージポンピング法の2つの評価手法を確立することができた。これらの手法は、NBTIのメカニズムを解明していくうえで、強力なツールとなっており、これらを活用してさらに詳細にNBTIメカニズムの解析を行っていく。測定条件をさらに詳細に変化させ、活性化エネルギーなどの情報を得ることにより、NBTIの原因の特定を試みる。また、得られた成果をまとめ、論文誌への投稿を行う。このように、最終年度も引き続き強力に研究を行い、記載した研究計画を完遂する。
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次年度使用額が生じた理由 |
執行率は94%であり、概ね計画通りに執行できたと考えているが、未使用額が生じたのは、論文投稿が遅れたことにより英文校閲や論文掲載費の支出が無かったためである。令和4年度は最終年度であるため、成果のまとめや報告を中心に予算を使用することを計画している。
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