研究課題/領域番号 |
20K04578
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 敦之 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任准教授 (30774286)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | GaN / 窒化ガリウム / パワーデバイス / 多光子PL-OBIC / 衝突電離係数 / 電界分布計測 |
研究実績の概要 |
今年度は交付申請書に記載した項目のうち特に多光子PL顕微鏡を用いた多光子PL-OBICについての研究に関して大きく進捗があった。 デバイス内部の電界分布が発生している部分に多光子PLによるキャリアを発生させ、そのキャリアをデバイス電極を通して電流として観測可能であることを確認し、多光子PL-OBICが可能であることを突き止めた。これによってデバイス内部の電界分布が観察可能になった。その基本的な概念としては多光子励起をプローブとして内部の電界分布を観察するというものであったが、GaN結晶中での焦点の奥行方向のボヤケとデバイス中のpn界面に発生させた空乏層(及びそれによる電界分布)では基本的に焦点のボヤケの方が大きく、電界分布をプローブに多光子励起が発生している焦点の形状を観察していることが明らかになった。現在ではこれを解決するため、逆畳み込みによる電界分布の復元と多光子励起焦点の極小化に取り組んでいる。 また、上記とは別にpnダイオードのn+である基板中に多光子PL-OBICを用いて正孔を発生させ、それを電界が発生しているpn界面に流すことによって増幅される電流値をはかることにも成功し、結果としてGaNの正孔の衝突電離係数の測定に成功した。この方法はこれまで他所でGaNの衝突電離係数測定のためにとられていた方法と比較して、実際のデバイス構造のまま測定できることやn-ドリフト層を自由に設計して測定できるという特徴があり、世界で初めて広い電界範囲での正孔の衝突電離係数のデータを得られた。現在これをまとめた論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の年次計画表ではFK-OBICと多光子PL-OBICを並行して進める予定であったが、今年度は多光子PL-OBICが順調に進み、多光子PL-OBICで行おうとしていた研究予定にして2022年度分を越えるくらいまで大きく進展があった。多光子PL-OBICに集中した分FK-OBICに関しては全く時間を割けなかったが、全体を通して進捗を総合的に勘案すると当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上で述べた通り、多光子PL-OBICに関して大きな進展があったが、多光子PL-OBICが不得意な部分も明らかになってきた。2022年度は多光子PL-OBICを用いたままその部分の解決を図るとともに、FK-OBICによってもこの多光子PL-OBICが不得意な部分を補っていくような観察ができないかを念頭にFK-OBICに関する研究を進める。
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