研究課題/領域番号 |
20K04580
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池之上 卓己 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (00633538)
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研究分担者 |
三宅 正男 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (60361648)
平藤 哲司 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (70208833)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミストCVD法 / 岩塩構造 / NiMgO / ZnMgO |
研究実績の概要 |
まず、ミストCVD法を用いた高Mg組成のNi1-xMgxOの成膜に取り組んだ。Ni源とMg源を両方含む混合溶液からは、Mg組成が最大でx=0.3程度にとどまっていたが、2つの原料溶液を個別に供給する方式をとることで、全組成域にわたってMg組成を制御することを実現した。また、供給量に応じてほぼ正確に薄膜中の組成を制御可能となり、産業応用にも適した方法であるといえる。その結果として、これまで最大でも3.8eVであったバンドギャップを4.8eV程度まで拡大することに成功した。 次に、Liドーピングによる導電性制御に取り組んだ。NiOと同様にLiドーピングによる比抵抗の低下が確認された。Liが効果的にドーピングされたことが示唆されたといえる。移動度が小さいために、詳細な分析が行えていないが、原料溶液中のLi濃度の増加に応じて得られる薄膜の比抵抗が低下することから、ドーピング濃度によるキャリア濃度制御が可能であると見込まれる。今後は移動度の向上が課題になると考えている。 今年度は、ZnOを加えた、NiO-MgO-ZnO系の岩塩構造での安定領域の調査と、格子整合する組成でのエピタキシャル成長に取り組み、デバイス応用を見据えた成長技術の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、全Mg組成にわたってのNi1-xMgxO薄膜のエピタキシャル成長を実現し、バンドギャップの拡大に成功した。分析が不十分な部分もあるが、Liドーピングの成功も示唆されている。 薄膜の移動度を向上させる工夫をしつつ、計画通り今年度の研究を遂行したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのNiMgOにZnOを加えたNiO-MgO-ZnO系の成長に取り組む。ZnOはウルツ型構造が再安定なため、混晶の形成は組成に応じて相分離することが想定される。そこで、岩塩構造での安定領域の調査と成長条件の検討を行う。 そののちに、MgO基板上に完全に格子整合した結晶成長による高品質化を行い、簡単なデバイス作製に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、出張がほぼ不可能であったことから、旅費の利用が0円となってしまった。また、緊急事態宣言等により、研究活動が制限された時期もあり、消耗品等の利用も減り、次年度使用額が生じた。 今年度も、新型コロナウイルス感染症の影響がなくなるとは考え難いので、旅費の利用が減ることが想定されることから、計画を見直し、研究を遂行する。
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