最終年度は、MgOと完全に格子整合するNiO-MgO-ZnO系について、これらの組成と格子定数の関係を明らかにした。様々な組成のNiO-MgO-ZnO薄膜をミストCVD法で成長し、各薄膜の組成と格子定数を測定した。得られた格子定数と組成の関係は、べガード則に従っていた。結果として、Ni:Zn=2:1の組成で、Mg組成によらずMgO基板に格子整合することが示された。 また、ZnOは室温でウルツ鉱構造が安定相である。したがって、MgO-ZnOでは、組成によって相分離する。NiO-MgOは全組成域で岩塩構造が安定であるが、NiO-MgO-ZnO系では、ZnO組成が高い領域で相分離するものと想定される。そこで、ミストCVD法で岩塩構造単相のNiO-MgO-ZnO系が成長できるZnO組成も調査した。おおむね、全体に対するZnOの組成が約30%以下の時、岩塩構造単相となる。これは、MgO-ZnO系の結果とおおむね一致する。このMgOと格子整合するNiO-MgO-ZnOはMgO基板上に成長した際はいかなるMg組成でも岩塩構造単相となることも分かった。 実際に、Mg組成を制御したMgOと格子整合するNiO-MgO-ZnO薄膜を成長し、格子整合したままバンドギャップを拡大できることを示した。このNiO-MgO-ZnO薄膜についても、Liによってp型ドーピングで可能であることが示唆された。AlやGaを用いたn型ドーピングにも取り組んだが、キャリア濃度制御には至らなかったものの今後も精力的に取り組む。 なお、当初計画していたデバイス化については、本課題を基課題として採択された国際共同研究強化(A)で遂行している。
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