研究課題/領域番号 |
20K04581
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
梁 剣波 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80757013)
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研究分担者 |
重川 直輝 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (60583698)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / GaN / Ga2O3 / 直接接合界面 |
研究実績の概要 |
ダイヤモンドは、炭化シリコン(SiC)、GaN、Ga2O3のバンドギャップ(3.3 ~ 4.5 eV)を大きく上回る5.5 eVと、非常に大きなギャップを有する新しいワイドギャップ半導体材料である。また、材料中で最高の熱伝導率(約22 W/(cm・K))を有し、銅の約6倍である。大きなバンドギャップと最高熱伝導率に起因する優れた物性を活かすことを狙ったパワーデバイスの研究開発が盛んに行われている。低電力損失と冷却システムの軽量化の両面から省エネに直結する様々な電力変換素子や高周波無線通信基地局用パワーアンプ等への応用は、最も期待されている。その一方、ダイヤモンドはパワー半導体として根本的かつ大きな問題点が2つある。1つは、n型ドーピングに利用されるP(リン)が室温での不活性化で、十分な電子伝導性を有るn型ダイヤモンドが未だ実現されていない。もう1つの問題点は、半導体デバイス製造ラインに必要とされる最低でも2インチサイズのダイヤモンド基板の作製が非常に困難である。本研究はダイヤモンドの有する両課題に対して、異種材料への直接接合が一つの解策になる大きな可能性を秘めていると考える。また、ダイヤモンドと異種材料の直接接合をデバイスに応用するためには、接合界面の構造特性と電気特性を解明することが必須である。 本研究は、常温でダイヤモンド基板とGaN及びGa2O3基板の直接接合技術を開発し、電子伝導を有するn型ダイヤモンドと大口径ダイヤモンド基板の欠如を将来的に解決するための技術を提案することを一番の目的とする。研究開発期間においては、ダイヤモンド基板と、GaN及びGa2O3基板との直接接合技術の開発を行う。接合界面におけるナノ構造と電気的特性評価を行う。p型ダイヤモンド基板と、n-GaN及びn-Ga2O3 基板と直接に接合し、2種類の接合試料を作製する。接合条件を最適化すると共に、接合界面構造と電気的な特性評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定とおり、研究が進んでいます。常温でSi基板上に製膜したGaN層をダイヤモンド基板と直接に接合し、接合後Si基板を機械研磨とウェットエッチングプロセスにより完全に除去し、GaN/ダイヤモンドヘテロ接合を実現した。透過型電子顕微鏡(TEM)観察により接合界面構造を評価し、接合界面に厚み数ナノメートルの遷移層が形成されたことを確認し、遷移層の主な成分がカーボンであることを明らかにした。デバイス作製プロセスへの適用性を検証するため、窒素雰囲気中に600℃と1000℃での耐熱性を調査した。
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今後の研究の推進方策 |
Si基板上に製膜した導電性ダイヤモンド層とGa2O3基板と直接に接合を行う。FIB加工手法を用いてGa2O3/ダイヤモンド接合試料のTEM試料を作製し、透過型電子顕微鏡を用いて接合界面構造と組成元素の挙動評価を行う。接合界面に形成された中間層構造を解析し、界面付近の組成を分析し、熱処理温度による接合界面における中間層構造や組成への影響を調査し、高温耐熱性接合界面のメカニズムを解明する。高温熱処理後の接合界面に形成された中間層の結晶構造解析と熱膨張係数差により発生した残留応力の評価を行い、接合界面の耐熱性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で初年度にダイヤモンド基板とGa2O3基板の購入を予定していた基板の納期が長くなりましたことで、今年度に納品し、精算することになっています。
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