研究課題/領域番号 |
20K04582
|
研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
牧野 久雄 高知工科大学, システム工学群, 教授 (40302210)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 酸化亜鉛 / ガスセンサ / 結晶極性 / 欠陥 / 化学状態 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、機能性材料として広く期待される酸化物半導体酸化亜鉛(ZnO)多結晶薄膜において、分極特性制御と硬X線光電子分光法による欠陥評価により、多結晶薄膜中の各種欠陥に対する分極特性制御の効果と化学センサの反応サイトとしての特性を解明しようとするものである。令和2年度の当初の目標は、RFマグネトロンスパッタ法によるガラス基板上ZnO薄膜の分極特性の制御であり、成膜前のガラス基板へのプラズマ処理条件、成膜時の導入ガス、圧力などの成膜条件が多結晶薄膜の結晶配向性、極性、格子歪に与える効果を明らかことであった。 多結晶ZnO薄膜の極性制御では、酸素ガスの導入量とシード層膜厚依存性について硬X線光電子分光による極性評価によって検討し、極性制御性を高めた。また、ガラス基板に対するプラズマ処理の効果では、X線光電子分光法による表面化学状態の評価から構造制御に関する新たな知見を得た。これは、ZnO多結晶薄膜の新しい構造制御の可能性を示唆する重要な結果であった。しかし、成膜条件の検討についてはここまでに留まった。 令和2年度の実施計画の一部を見直し、当初の実験計画において令和3年度以降に計画した内容を一部前倒しして研究を進めた。GaドープZnO薄膜のドーパントに対する熱処理効果では、アルミ保護膜によってドーパントの変化によるキャリア密度の減少が抑えられることとともに、アルミ保護膜の化学状態変化を明らかにした。硬X線光電子分光法による化学状態評価の基礎データとしての意義があり、成果の一部を取りまとめ学会発表を行った。また、センサ特性評価のための測定系を新たに構築した。多結晶ZnO薄膜についてエタノールに対する反応特性を評価し、ガス反応性が結晶極性にも依存することを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度の当初の目標は、RFマグネトロンスパッタ法によるガラス基板上ZnO薄膜の分極特性の制御であった。新型コロナ感染症対策による研究上の制約のために、当初計画通りに実験を進めることができなかった。そのため、令和2年度の目標に対する進捗状況としてはかなり遅れている。その一方で、実施計画全体の時系列を一部見直して実施した研究により、ガス応答性の違いや欠陥生成に対する積層膜効果について新たな知見を得ることができたことから、研究計画全体に対しては一定の成果が得られたと判断される。以上の理由から、研究は当初の予定よりやや遅れていると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度に計画したが進捗が遅れているガラス基板上ZnO薄膜の分極特性の制御に関する研究計画を推進する。フレキシブル基板上での成膜を新たに取り入れて、応力効果による特性制御を試みる。また、計画を前倒しして実施したドーパントに対する熱処理効果については、成果を整理して学術論文への投稿準備を進める。令和2年度計画の遅れに伴い、分極特性制御に対する欠陥特性の評価については計画を遅らせる。一方で、センサ応答特性の検討に対しては、当初計画よりも早めに構築した測定系と新たに取り組む応力効果を用いて、センサの応答性制御に関する研究の進展を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
硬X線光電子分光法による評価で必要となる真空部品、分極特性制御のための成膜原料の経費を見積もっていた。しかし、分極特性制御に関する研究の進捗が遅れたために、研究計画の時系列を一部見直し次年度以降に予定していたセンサ評価用の計測系を優先して整備した。そのため、それらの差額として次年度使用額が発生した。次年度以降、評価に必要な真空部品と初年度に予定していた成膜原料経費として使用する。
|