本研究課題の目的は、機能性材料として広く期待される酸化亜鉛多結晶薄膜において、多結晶薄膜中の欠陥に対する分極特性制御の効果と化学センサの反応サイトとしての特性を解明しようとするものである。初年度は、マグネトロンスパッタ法によるガラス基板上での配向性、結晶極性、格子歪の制御。2年目は、それらがドーピング特性やガス検知特性に与える効果の検討。最終年度は、極性制御、格子歪による分極制御、熱処理、プラズマ処理が、電気特性、ドーパント化学状態、化学反応性に与える効果の検討を計画した。
最終年度となる令和4年度は、金属極薄膜による結晶極性制御法について、金属と酸化亜鉛界面での化学結合性と結晶極性との相関を見出し、デバイス構造への適用を見据えた積層構造での極性制御について確認した。極薄アルミ積層膜の熱処理効果では、界面層形成と膜厚依存性、電気特性への粒内欠陥と粒界の寄与を検討するとともに、フレキシブル基板による応力効果を明らかにした。また、欠陥評価の観点から紫外線に対する応答性に着目し、多結晶薄膜の結晶極性制御が時間応答性、雰囲気ガスとの反応性について検討した。
本研究課題では、ガラス基板上の酸化亜鉛薄膜について、表面化学状態、金属との化学結合性を利用した結晶構造制御の可能性が示された。特に、極性制御に関する知見は、ナノ構造創成のためのシード層、分極特性を利用したデバイス応用につながる重要な知見である。ドーパント化学状態については、極薄アルミ保護膜の効果が明らかなった。フレキシブル基板上多結晶薄膜の応力効果では、ピエゾ分極による電気特性制御の可能性を示した。化学反応性については、表面、結晶粒界、粒内欠陥特性との関連性の知見、プラズマ処理と熱処理によるガス反応性の向上、結晶極性の効果など新たな知見が得られ、化学センサの応答性制御、光と化学反応の複合機能センサ応用への可能性が見いだされた。
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