小型の電子デバイスの製造技術は現代でも変わらず必須技術であり,各国が接合技術を含む配線工法等の開発に取り組んでいる。特に個人向け情報端末のみならず,車載機器においても精密接合技術に対するニーズが増大傾向にある。本研究では,接合阻害因子として知られる自然酸化皮膜を有機酸に曝露することで金属塩被膜に置換・還元除去し,接合時の昇温により熱分解させることで金属面を露出させる金属塩生成接合法を種々の金属間に適用し,接続特性に及ぼす金属塩被膜処理効果を検討した。 研究期間前半では,ステンレス鋼や銅・銅合金など,筐体や熱伝導部品に用いられる金属素材に対して金属塩生成接合法の適用を試みた。その結果,本接合法を用いることで,酸化皮膜の置換・還元除去に加えて,金属塩被膜が接合前の酸化皮膜の成長を抑制することで,より低温・低荷重で高い接続特性が得られることが明らかとなった。 研究期間後半では,Cuナノ粒子を用いたCuどうしの低温固相接合やTLP接合用Znインサート材の創製の検討を実施し,インサート材の形状や接合法を問わず,金属塩被膜処理効果が得られることがわかった。 また最終年度においては,樹脂と金属の直接接合に関する検討を実施し,金属側に金属塩被膜処理を施すと水素結合を阻害するために接合強度が低下するものの,樹脂側に有機酸を作用させることで物理化学的性状が変化することで,接合強度が大幅に向上することを見出した。
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