研究課題/領域番号 |
20K04595
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
川江 健 金沢大学, 電子情報通信学系, 准教授 (30401897)
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研究分担者 |
岡崎 宏之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 博士研究員(任常) (90637886)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 強誘電体ゲート電界効果トランジスタ / ガンマ線照射 |
研究実績の概要 |
強誘電体ゲート型ダイヤモンド電界効果トランジスタ(ダイヤモンドFeFET)に対する放射線耐性の検証およびデバイス特性の劣化要因を明らかにする事を目的とした研究を遂行する。 初年度の検証項目として、FeFETに対するガンマ線照射に対して生じる主なデバイス特性における劣化要素のスクリーニングを実施した。 具体的には、ダミーデバイスとして再現性の良いデバイス特性が得られるZnOチャネルFeFETに対するガンマ線照射線実験を行った。また、強誘電体ゲートであるPZTを形成するプロセスとして、パルスレーザー堆積(PLD)および化学溶液堆積(CSD)を用いて両者の比較も実施した。PLDおよびCSDで作製したZnOチャネルFeFETは、共に良好なnチャネルFeFET動作を示す事を確認した。 両ダミーデバイスに最大強度20Gyのガンマ線を照射した結果、ZnOチャネルFeFETのId-Vg特性におけるオン電流の僅かな低下および特性シフトを確認した。一方、オフ電流の増加や同一基板上に作製したPZTキャパシタの強誘電性や絶縁性の劣化は一切確認されなかった。 以上の結果は、ガンマ線照射が引き起こすデバイス劣化箇所として、PZTゲートとZnOチャネル界面における界面準位の増加が主であると推察される。また、観測された特性劣化はCSD法でPZTゲートを作製した試料でやや顕著に見られた事から、界面準位の増加は界面に混入したナノカーボンやPZTゲートの非晶質成分がガンマ線照射によりチャネル側へ熱拡散したものと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PZTゲートをPLDおよびCSDで作製したZnOチャネルFeFETダミーデバイスに対し、最大強度20Gyのガンマ線を照射した結果、ZnOチャネルFeFETのId-Vg特性におけるオン電流の僅かな低下および特性シフトを確認した。一方、オフ電流の増加や同一基板上に作製したPZTキャパシタの強誘電性や絶縁性の劣化は一切確認されなかった。 以上の結果は、ガンマ線照射が引き起こすFeFETにおける劣化箇所として、主にPZTゲートとZnOチャネル界面における界面準位の増加が主なものであると推察される。また、観測された特性劣化はCSD法でPZTゲートを作製した試料でやや顕著に見られた事から、界面準位の増加は界面に混入したナノカーボンやPZTゲートの非晶質成分がガンマ線照射によりチャネル側へ熱拡散したものと推察される。 以上の結果を踏まえて、ダイヤモンドFeFETの放射線耐性に対し、熱拡散を考慮した「PZTゲートの高温堆積(非晶質成分の抑制)」、「バリア層の導入(チャネル側への拡散防止)」、「デバイス形成後のダミー熱履歴の印加(拡散成分の低減)」が有効策であるものと考察され、目的とするデバイス構造作製に対する研究遂行の指針が得られた。 また、ガンマ線照射による結合切断などの直接的な破壊現象の有無を検証する事を目的とし、ガンマ線照射強度に対する実験指針が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
ダミーデバイスを通したガンマ線照射による具体的なデバイス特性の劣化項目が明らかとなった事により、ダイヤモンドFeFETにおける熱拡散を考慮した「PZTゲートの高温堆積(非晶質成分の抑制)」、「バリア層の導入(チャネル側への拡散防止)」、「デバイス形成後のダミー熱履歴の印加(拡散成分の低減)」を取り入れたデバイス形成プロセスを構築する。 また、ガンマ線照射によるデバイス構成物質の結合切断などの直接的な破壊現象の有無を検証する事を目的とし、数10kGyオーダーまで強度を引き上げたガンマ線照射に対する検証実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、研究分担者であるQST・岡崎の研究活動が制限され、分担金の一部が未執行となった。 当該の差額に関しては、次年度の研究遂行を加速する事を念頭に、主にQST・岡崎との研究打ち合わせおよびQSTでのガンマ線照射実験に係る旅費に充当する。
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