令和5年度は,令和4年度までに実施することができなかった回路試作をおこなった. 前年度までにほぼ完了していた設計内容に加えて令和5年度は,以下の3項目について新たに設計を行った.第1に,補助電源部の効率改善を目的とした小変更を行った.補助電源は,チャージポンプで構成されるが出力電圧を電源電圧に制御するため,間欠動作を行っている.間欠動作の停止のタイミングにより出力電の電荷が前段に逆流する問題があった.この問題を回避するため,間欠動作の停止時に出力電圧および停止のタイミングによらずチャージポンプを構成するスイッチが確実にオフする停止方法を採用した.また,チャージポンプのスイッチの制御信号だけではなく,クロックを生成する発振回路の出力部分を停止させることにより間欠動作においてスイッチングを行うスイッチ数を削減し,スイッチング損失も低減している.第2に,昇降圧動作を行う範囲の縮小を行った.提案する電源回路は昇圧動作および降圧動作に加えて昇降圧動作が可能であることから広い入出力電圧範囲を実現している.一方で,昇降圧動作は昇圧および降圧動作に比べて効率が低い.試作した電源回路では昇降圧動作を行う動作範囲を出来るだけ縮小することで高効率で動作する電圧範囲を拡大した.昇降圧動作の範囲の縮小は発振の原因となる.動作モードの遷移時に出力電圧の変動を生じない制御信号を生成することで発振を抑圧した.第3に,クロック波形の整形によるスイッチング損失の低減を行った.これまでに使用されていたクロック信号は状態遷移時のスイッチング損失が大きかった.クロックのデッドタイ身を見直し,論理ゲートの状態遷移時のスイッチング損失を低減した. 以上の特徴を含む電源回路は全入力範囲において90%以上の効率を有することが確認された.
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