研究課題/領域番号 |
20K04598
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
武田 正典 静岡大学, 工学部, 准教授 (80470061)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超伝導パラメトリック増幅器 / カイネティックインダクタンス / 周期構造線路 |
研究実績の概要 |
本研究は,超伝導伝送線路のカイネティックインダクタンス非線形性を利用する進行波型超伝導パラメトリック増幅器に関するものである.特に,周期構造線路であるFishbone型超伝導伝送線路(FTTL)を適用することにより増幅器の小型化を目指すものである.令和3年度は,進行波超伝導パラメトリック増幅器における位相整合回路の設計及び利得解析,また高利得を得るために必要なFTTLの長尺化について検討した. 本研究で扱う進行波型超伝導パラメトリック増幅器は,ポンプ波長の1/2及び1/6の間隔毎にインピーダンスが異なる線路を付加することでポンプ周波数周りに分散が生じ,その結果ポンプ周波数周りで位相整合を取ることができる.本研究では増幅器の温度4K動作を目標にしているため,温度4 Kにおける表面抵抗を考慮して伝搬定数を解析し,位相整合回路の設計を行った.温度4 Kにおける伝送損失を考慮し,モード結合理論を用いてパラメトリック利得を計算したところ,周波数4-12 GHzにおいて20 dB以上のパラメトリック利得が得られたことから,目標としている温度4 Kにおける増幅器動作は十分期待できることが分かった.また,従来のコプレーナ線路(CPW)を用いる場合と比較し,FTTLを用いることで,同じ利得を実現するのに線路長を約1/3程度短縮できることが分かった. 前年度,FTTLの長尺化については線路の曲げ部分にCPWを用いるFTTL-CPWハイブリッド線路が有用であることを示した.FTTL-CPWハイブリッド線路において,CPWの中心導体の幅を変化させて伝送特性について測定を行ったところ,FTLLとCPWの中心導体の幅が同じ線路において放射損が小さく優れた伝送特性を示した.今後,上記の理論計算に基づきFTTL-CPWハイブリッド線路を用いる進行波型超伝導パラメトリック増幅器の設計,作製,評価を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は,温度4 Kで動作可能な進行波型超伝導パラメトリック増幅器の設計を目的に,①位相整合回路の設計,②パラメトリック利得の理論解析を目標に挙げた.項目①に関しては,前年度得られたFTTLの実効波長やカイネティックインダクタンスの実験値を用いて位相整合回路を設計した.項目②に関しては,温度4 Kでの利得を解析するため,FTTLの伝送損失を考慮し,モード結合理論によりパラメトリック利得の計算を行った.解析結果は本増幅器を温度4 Kで動作させたとしても十分利得が得られることを示しており,本増幅器の設計を完了した.以上の理由から順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方策として,令和4年度ではFishbone-CPWハイブリッド線路を用いた進行波型超伝導パラメトリック増幅器を作製し,マイクロ波帯で利得や雑音など増幅器性能を測定する.実験系の整備を行うとともに,増幅器性能向上のためには伝送線路の細線化かつ均一化が重要であるため作製プロセス等の見直しなども随時行う予定である.
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