研究課題/領域番号 |
20K04605
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
硴塚 孝明 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 准教授 (20522345)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 半導体レーザ / 光送信器 / 光ファイバ伝送 |
研究実績の概要 |
本研究では、超テラビット級光送信器の構成要素として期待される、超100 GBaud級変調かつ光ファイバ伝送の長延化をもたらす振幅変調光送信器の提案をめざし、(1)伝送距離を長延化する変調条件の追求、(2)前記変調条件を実現するレーザ共振器構造、(3)高速変調を可能とするレーザ構造、を課題として研究を進めている。 2021年度は、100 GBaud超級の高速変調、および、伝送距離の長延化をもたらす振幅、周波数の混合変調制御に向けて、DFB(分布帰還型)レーザ活性領域と電界吸収(EA)変調領域を有する複合共振器変調レーザを検討した。レーザ構造には、高光閉じ込めと低静電容量の特徴を有し、直接変調レーザおよびEA変調器において共に100 Gbit/s動作実績のある、InP系の薄膜レーザ構造を採用した。時間依存転送行列モデルに基づいた数値シミュレーションによりレーザの静特性および動特性を解析し、EA変調領域のシングル駆動による内部変調によって、112 Gbit/s Non-return-to-zero(NRZ)の振幅、周波数の混合変調を実現するレーザ構造を提案した。DFB活性領域およびEA変調領域における周波数チャープの影響を解析し、歪の少ない周波数変調の生成条件を示した。また、生成した112 Gbit/s NRZ変調信号の光ファイバ伝送シミュレーションを行い、波長分散量幅40 ps/nmにわたり波形劣化を抑制できることを確認し、100 Gbaud級光送信器における光ファイバ伝送距離の長延化に寄与する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、前年度のレーザシミュレーションに基づき、シングル駆動による振幅、周波数混合変調レーザの112 Gbit/s NRZ動作と、周波数変調の効果による光ファイバ伝送における分散耐性向上を確認し、O帯内で波長帯域40 nmに亘る10 km伝送の可能性が得られた。光ファイバの正分散および負分散の両領域における分散耐性向上の効果を確認し、期待された振幅、周波数混合変調信号の効果が示されたことで、多波長化に向けた進展が得られた。レーザシミュレーションに関しては、汎用性の高い転送行列モデルを採用し、任意のアクティブ、パッシブ領域の構成検討を可能とした。複合共振器レーザによる112 Gbit/sのNRZ動作が得られた一方で、動的消光比は不十分であり、PAM4伝送への適用に向けて引き続き設計改善が必要である。EA変調領域の周波数チャープ、およびレーザ領域の線幅増大係数の周波数変調波形への影響、また、複合共振器による変調帯域および周波数変調量制御の検討が進んだことから、最終目標のレーザ構造および光送信器構成の提案に向けた基盤が整った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度までの進捗により、複合共振器の内部変調による100 Gbaud超級の振幅、周波数混合変調信号生成と光ファイバ伝送における分散耐性向上の効果が得られたことから、引き続き本検討を発展させてレーザ特性の改善設計に取り組み、実証可能な構造を検討する。レーザ特性の改善については、動的消光比の増大に重点を置く。方針案としては、複合共振器により、レーザ前後の出力比を変えて振幅変調幅を増強する構造を検討する。消光比の増大によりPAM4信号の生成を容易にすると共に、振幅、周波数混合変調における抑圧搬送波単側波帯条件を実現し、光ファイバ伝送の分散耐性を向上して適用可能な波長範囲を拡大する。また、これまでに100 Gbaud級の動作が得られていることから、新たに更なる高速化に向けた設計も試みる。レーザの変調特性および伝送特性を数値シミュレーションにより評価し、最終目標である、チャネル合計で1 Tbit/sを超える伝送容量を有するO帯の多波長変調アレイの構成を提案する。得られた成果については学術誌および学会等で随時外部発表を進めていく。
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