本研究では、超テラビット級光送信器の構成要素として期待される、超100 GBaud級変調かつ光ファイバ伝送の長延化をもたらす振幅変調光送信器の提案をめざし、(1)伝送距離を長延化する変調条件の追求、(2)前記変調条件を実現するレーザ共振器構造、(3)高速変調を可能とするレーザ構造、を課題として研究を行った。変調条件として、振幅変調と周波数変調を混合した抑圧搬送波単側波帯(SSB)条件を採用し、112 Gbit/s のNon-return-to-zero(NRZ)信号を、O帯(波長1.3μm帯)の波長領域70 nmにわたり10 km以上伝送可能であることをシミュレーションにより示した。続いて、本変調条件の単一駆動による実装に取り組み、直接変調レーザと内部変調レーザをシミュレーションにより検討した。直接変調レーザとして、分布帰還型(DFB)活性層と分布ブラッグ(DBR)反射鏡を有するInP系分布反射型薄膜レーザを構成し、Detuned loading効果の導入により変調帯域の増大と70%の周波数チャープ低減を得たほか、複合共振器構造におけるSSB条件の生成可能性を示した。続いて、広帯域化、変調波形の改善に向けて内部変調レーザを検討し、DFB領域と電界吸収(EA)変調領域を有する複合共振器変調レーザを提案した。内部損失変調による高速変調と光子-光子共鳴による帯域増大、また周波数変調振幅の制御によって、単一変調電圧駆動で100 Gbaudを超える振幅・周波数の混合変調が得られた。最終年度にかけて、SSB条件に準ずる112 Gbit/s NRZ変調信号の生成と、O帯内の波長領域40 nmにわたる10 kmを超える光ファイバ伝送をシミュレーションにより確認した。本成果を通し、O帯多波長アレイ100 Gbaud超級変調レーザにおける複合共振器構造と振幅・周波数混合変調の有効性を示した。
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