研究実績の概要 |
超高感度、高波長分解能かつ可視光、近赤外域で一気にスペクトルイメージングを行うための超伝導検出器の研究を行う。超伝導転移端センサ(TES)は、超高感度で可視光、近赤外域の単一光子を一個ずつ分光して検出可能という、既存の検出器にない大きな特徴がある。一方、波長分解能向上についてはまだ開発途上である(近赤外で100 nm、可視光で50 nm)。バイオサンプルからの自家蛍光などをスペクトルを詳細に取得しながらイメージングするには、より高い波長分解能が望ましい。本研究では、波長分解能向上に取り組む。 本研究は、(1)小型TESに高効率で集光できるフラットレンズの開発(2)2 umかそれ以下のサイズの小型TES(3)超伝導転移温度を下げることによる分解能向上の取り組みを行なうことを計画した。(3)については、超伝導転移温度(Tc)を従来の300 mKから115 mKまで下げることで、世界最高レベルのエネルギー分解能向上(67 meV)を実現した(K. Hattori et al., Supercond. Sci. Technol. 35 095002 (2022))。 一方で、分解能決定要因を探索したところ、電流ノイズだけでは説明できない、未知の分解能劣化要因があることが判明した。これにより小型化ではこれ以上の分解能向上が見込めないことがわかった。分解能劣化の未知の要因として、光子が吸収される場所依存性による検出器応答の一様性が考えられる。 本研究ではTESの限られた部分のみに光子が照射されるように、もともとはフラットレンズを提案していたが、シミュレーションでフラットレンズは漏れ光が大きいことが判明した。そこで、よりシンプルで確実な方法として、TES上部に微細加工でアパーチャーを設置することを提案した。そして、設計・試作をおこなった。
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