研究課題/領域番号 |
20K04613
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
清水 康雄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, NIMS特別研究員 (40581963)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 3次元アトムプローブ / フォトニクス / 量子構造 / 半導体 / 同位体 |
研究実績の概要 |
次世代型CMOS-フォトニックの一体型高効率デバイスの創製に向けて、添加元素分布の不均一性や添加時に導入される欠陥の存在が光学的特性に大きく影響を与えるため、発光添加元素と欠陥の空間的な位置関係を明確にする必要がある。本研究では、原子レベルで元素の実空間分布を得る3次元アトムプローブ(3DAP)法と透過電子顕微鏡(TEM)を適用して、共添加元素(エルビウム・酸素の組み合わせに着目)および注入誘起欠陥の両者の分布を明らかにするとともに、フォトルミネッセンス(PL)発光特性と照らし合わせて添加元素分布-結晶欠陥分布-発光特性の三者の直接的な因果関係を解明することを目的とする。また、母材となるシリコンの同位体多層膜をサブナノメートルスケールの指標として利用する新しい概念を取り入れ、3次元アトムプローブによる高精度分析を実現する。この実験体系を構築して、発光複合体の空間的な広がりを自在に制御する指導原理へ繋げる。 3DAP法を適用するためには先鋭化した針状試料の作製が必須であり、初年度は集束イオンビームを駆使して局所領域から切削して抜き出す手順や加工形状の最適化を重点的に実施するとともに、3DAP法でシリコン中に共添加した元素(エルビウム・酸素)の3次元再構築像を取得し詳細な解析を実施できるようになった。さらには、共添加した局所領域におけるPL発光強度分布も得られるようになり、添加元素分布-発光特性の相関を調べられる状況になりつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に関する支援として、TEM観察を通じて欠陥物理学・照射損傷の専門知識を有する東北大学金属材料研究所(大洗センター)グループ、高度なリソグラフィー技術および局所イオン注入を実現する装置を有する早稲田大学グループ、面内分布評価が可能なフォトルミネッセンス測定系を有するイタリア・ミラノ工科大学グループの協力を得る体制を整え、具体的に以下の手順で実施を進めている。本研究では、原子レベルで元素の実空間分布を得る3次元アトムプローブ(3DAP)法と透過電子顕微鏡(TEM)を適用して共添加元素分布および結晶欠陥分布を明らかにするとともに、フォトルミネッセンス(PL)発光特性と照らし合わせる。上記の協力を得て、添加元素分布-結晶欠陥分布-発光特性の因果関係を解明できるようにする。 1)試料設計・準備:エルビウム・酸素を共添加したシリコン試料を用意した。3DAP法では観察領域に制限(表面から約200nmまでが適正)があるため、注入量・深さなど厳密に設計した。微細針状のための試料切り出しが技術的に最も難しい点である。イオン注入領域は100um四方に設定した。 2)微細針状加工および解析条件の最適化(元素分布・欠陥分布の関係):3DAP測定の適用には先端径20nm以下に先鋭化する必要がある。高精度な集束イオンビーム加工装置を用いて、局所イオン注入箇所を含むように針形状の最適化を図った。3DAP測定において、極細針状試料の先端から原子を1個ずつ剥ぎ取るための測定条件の最適化を行い、多量の3次元データ(エルビウム、酸素、それらの複合体)を蓄積できる状況を整えている。 3)PLによる光学的特性評価:イオン注入領域の光学測定の最適化を行い、100um四方に打ち込まれた領域の発光強度分布を得つつある。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、3次元アトムプローブ(3DAP)法と透過電子顕微鏡(TEM)を適用し、共添加元素分布および結晶欠陥分布を明らかにするとともに、フォトルミネッセンス(PL)発光特性と照らし合わせて、添加元素分布-結晶欠陥分布-発光特性の因果関係を解明するべく、継続して分析条件の最適化を重点的に実施する。具体的には以下の推進案を検討している。 1)微細針状加工および解析条件の最適化(継続):3DAP測定の適用には先端径20nm以下に先鋭化する必要がある。高精度な集束イオンビーム加工装置を用いて、局所イオン注入箇所を含むように針形状加工および3DAP測定の最適化を継続して行い、統計精度の向上のため多量の3次元データ(エルビウム、酸素、それらの複合体)を蓄積していく。TEM観察では、注入・活性化熱処理条件に応じて生じるイオン照射誘起欠陥種の同定のため最適な励起条件を見出す。 2)PLによる光学的特性評価(継続):イオン注入領域の光学測定の最適化を行い、100um四方に打ち込まれた領域の発光強度分布を効率良く得る。 3)元素分布と光学的特性との相関の解明:イオン注入後の活性化熱処理で添加元素が再分布する様子を段階的に抜き取り、原子スケールで起こる拡散・凝集現象を追跡する。同一試料の光学的特性結果と照らし合わせ、添加元素-欠陥分布-発光特性の相関を明確にする。 以上の結果をまとめ、論文発表による成果公開を進める。
|