研究課題/領域番号 |
20K04615
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
齊藤 敦 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (70313567)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 無線電力伝送 / 送信用アンテナ / 超伝導バルク |
研究実績の概要 |
令和2年度は、超伝導バルクディスク共振器型アンテナの3次元モデルを提案・設計し、最適なバルクディスク径、臨界結合条件、誘電体の実効比誘電率を調査した。1次設計、一次試作により、50K において共振周波数5.31 GHz、無負荷Q値1120を得た。この結果をもとに2次設計を行った結果、バルクディスク共振器の直径7.58 mm、厚さ0.5 mm、ギャップ給電距離 3.75 mm、サファイア基板の実効比誘電率 8.35 とすることで、共振周波数5.0021 GHz、結合パラメータβ~1 を実現し得るアンテナモデル(2次設計)を得ることができた。 次に、電力半値角を低減するためのコリメータレンズを外注し、1次設計したアンテナと受信用ホーンアンテナを用いて、電力送電実験を行った。平成2年度の目標である、伝送距離0.5 m、入力電力10 mW以上、受信電力0.01 mW 以上に対して、伝送距離0 m、入力電力50.1 mW、受信電力6.18 mWを得ることができ、伝送効率14.9%を達成した。また、コリメータレンズを用いることで、最大17.1%の伝送効率を達成した。 これらの成果は、応用物理学会東北支部大会にて口頭発表(オンライン)できた。 令和3年度は、電波暗室の整備を行い、最大入力電力100W、最大伝送距離 1 m の無線電力伝送実験が可能なシステムを構築する。これにより、電力伝送効率とアンテナの指向性評価が可能となる。令和3年度目標は、入力電力10 W以上、伝送距離1 m、受信電力0.1 W 以上、電力伝送効率1% 以上とする。また、コリメータレンズは令和2年に購入したレンズを用いる。 さらに、マイクロ波フィルタ設計で一般的に用いられるカップリングマトリクスと電磁界解析ソフトを駆使し、電力伝送効率を飛躍的に向上させるための8素子アレイ共振器アンテナの設計を行い、その有効性を調査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、電磁界解析用PCの購入と市販ソフト(CST STUDIO SUITE)の年間利用ライセンス契約を行うことで、電磁界解析ツールを最大限に活用した。超伝導バルクディスク共振器型アンテナの3次元モデルを提案・設計し、バルクディスク径の調整による所望の周波数への調整と、給電方法の最適化による臨界結合条件、さらには誘電体の実効比誘電率を調査した。1次設計において、バルクディスク共振器の直径6.70 mm、厚さ0.5 mm、ギャップ給電距離 4.30 mm とすることで、共振周波数4.9959 GHz、結合パラメータβ~1を実現しうるアンテナモデルを得た。次に、シミュレーションにより得られたアンテナを実験的に評価検証するために、超伝導バルク共振器、誘電体基板、金属キャビティーを外注しアンテナを構成した(1次試作)。その結果、パルスチューブ冷凍機による超伝導バルクの超伝導転移を確認し、50K において共振周波数5.31 GHz、無負荷Q値1120を得た。この結果をもとに2次設計を行った結果、バルクディスク共振器の直径7.58 mm、厚さ0.5 mm、ギャップ給電距離 3.75 mm、サファイア基板の実効比誘電率 8.35 とすることで、共振周波数5.0021 GHz、結合パラメータβ~1 を実現し得るアンテナモデル(2次設計)を得ることができた。 次に、電力半値角を低減するためのコリメータレンズを外注し、1次設計したアンテナと受信用ホーンアンテナを用いて、電力送電実験を行った。平成2年度の目標である、伝送距離0.5 m、入力電力10 mW以上、受信電力0.01 mW 以上に対して、伝送距離0 m、入力電力50.1 mW、受信電力6.18 mWを得ることができ、伝送効率14.9%を達成した。また、コリメータレンズを用いることで、最大17.1%の伝送効率を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は前年度の実験結果を設計に反映させ、モデルの改善を行うことで、より低損失・高効率なアンテナ構造を明らかにする。また、前年度得られた2次設計をもとに2次試作を行い、アンテナ特性等の評価を行う。令和3年度は2次試作以降のアンテナの低温でのマイクロ波特性評価に加えて、電波暗室の整備を行い、最大入力電力100W、最大伝送距離 1 m の無線電力伝送実験が可能なシステムを構築する。これにより、電力伝送効率とアンテナの指向性評価が可能となる。令和3年度目標は、伝送距離1 m、入力電力10 W以上、受信電力0.1 W 以上、電力伝送効率1% 以上とする。また、コリメータレンズは令和2年に購入したレンズを用いる。 本年度の目標は達成できる見通しは十分であり当初の予定にはないが、電力伝送効率を飛躍的に向上させるためにアンテナのアレイ化に挑戦する。マイクロ波フィルタ設計で一般的に用いられるカップリングマトリクスと電磁界解析ソフトを駆使し、8素子アレイ共振器アンテナの設計を行い、その有効性を調査する。
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