研究課題/領域番号 |
20K04616
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
川那子 高暢 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (30726633)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | WSe2 / CMOSFET |
研究実績の概要 |
2022年度は、MoS2以外のチャネル材料としてWSe2に適用する事を検討した。MoS2は基本的に硫黄欠陥による電子ドーピングによって、電子が伝導するn型FETとして動作するが、逆に正孔が伝導するp型FETの実現は極めて難しい。一方、WSe2はソース/ドレインの金属材料の仕事関数によってn型とp型の両極性伝導を示す。n型とp型の両方のFET動作には、適切な金属材料をソース/ドレイン電極を選択する必要がある。n型WSe2 FETの場合、WSe2の伝導帯下端は多層膜で3.5eVと浅いために、一般的な低い仕事関数金属のアルミニウム(Al)4.1eVよりも更に小さい仕事関数金属が必要である。しかし、4eV以下の金属は化学的に不安定で容易に酸化するためソース/ドレイン電極として使用する事が極めて難しい。本研究ではアルミニウムスカンジウム合金(AlSc)をn型に用いる。AlSc合金は単体のAlやScよりも化学的に安定かつAlよりも低い仕事関数を示す。一方、p型には酸化タングステン(WOx)をソース/ドレイン電極の金属材料に用いた。WOxは5.6eV以上の大きな仕事関数を示すだけでなく、WSe2表面を酸化する事で形成が可能である。WSe2を転写し、バックゲート構造FETの作製と評価を行った。その結果、WSe2を用いたn型とp型の両方のFET動作に成功した。これによりWSe2にドーピングをせずに、良好なn型とp型FET動作を実証する事ができた。さらに作製したWSe2のn型とp型FETを用いて相補型(CMOS)インバータの動作にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、合金及び化合物金属をソース/ドレイン電極に用いたWSe2 n型とp型の両方のFET動作に成功した。本研究ではアルミニウムスカンジウム合金(AlSc)をn型に用い、p型には酸化タングステン(WOx)をソース/ドレイン電極の金属材料に用いた。バックゲート構造のWSe2 n型とp型のFETの作製と評価を行った。その結果、WSe2を用いたn型とp型の両方のFET動作に成功した。これによりWSe2にドーピングをせずに、良好なn型とp型FET動作を実証できた事は大きな前進である。さらに作製したWSe2のn型とp型FETを用いて相補型(CMOS)インバータの動作にも成功し、昨年度までに計画していたn型とp型FETの一対のペアから構成されるCMOSFETへの応用へと展開する事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は合金及び化合物金属をソース/ドレイン電極に用いるコンタクト技術を活用し、トップゲート構造のWSe2 n型とp型の両方のFET動作へと展開する予定である。加えて、セルフアラインプロセスによるトップゲート構造の作製とn型とp型の両方のFET動作を計画している。セルフアラインプロセスを確立する事で、FETのチャネル部分とソース/ドレイン電極との重なりやずれを無くし、更なる電気特性の改善が期待できる。セルフアラインプロセスによるトップゲート構造を作製し、n型とp型FETの一対のペアから構成されるCMOSFETへと応用展開する事を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界規模でのコロナウイルス感染症によって、参加を予定していた国際学会及び国内学会が中止あるいはオンライン開催に変更されたため、旅費の使用がほとんど無くなってしまい次年度使用額が生じた。 今年度からはコロナウイルス感染症の制限が緩和されるため、参加を予定している国際学会及び国内学会にはオンラインではなく現地開催となるため、旅費の使用が発生すると思われる。
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