研究課題/領域番号 |
20K04617
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
曽我 之泰 金沢大学, 数物科学系, 助教 (90525148)
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研究分担者 |
佐藤 政行 金沢大学, 数物科学系, 教授 (00266925)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 後進波発振管 / テラヘルツ波 / ミリ波 / 電子ビーム |
研究実績の概要 |
本研究は後進波発振管(BWO)に進行波管(TWT)を連結した新構造電子管による大出力テラヘルツ源の開発をおこなうことである。R2年度はBWOセクションの開発を進めた。2枚のグレーティングを半周期ずらして対向して配置するスタッガードダブルグレーティング遅波構造(SDG-SWS)を設計・製作し,ミリ波帯での原理検証をおこなった。得られた研究成果は以下の通りである。 (1)K帯(18-26 GHz)のSDG-SWSの設計・製作を高エネルギー加速器研究機構および金沢大学技術支援センターの協力により進めた。製作したSWSの性能検査を福井大学遠赤センター所有のミリ波帯ベクトルネットワークアナライザー(MVNA)によりおこない,良好な電磁波伝搬特性を確認した。金沢大で発振実験をおこなった結果,周波数24 GHz,26 Wの高出力発振を得ることに成功した。 (2)Ka帯(26-40 GHz)に周波数帯を上げ,同様に開発を進めた。発振予測周波数帯30-40 GHzにおいて,減衰率 -3dB以下の良好な透過特性が得られた。金沢大での発振実験の結果,周波数37 GHz, 9.2 Wの電磁波放射を確認した。 以上の実験結果は,SDG-SWSによるマイクロ波・ミリ波帯における出力は,現行の小型定常BWOと比べてトップクラスであることを示している。また,電子ビームエネルギーを制御することにより,BWOの特長である広帯域における周波数選択性を有することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R2年度で得られたスタッガードダブルグレーティング遅波構造(SDG-SWS)からの電磁波出力は,現行BWOと比してトップクラスである。最終開発目標である新奇BWO-TWT連結方式のうち,SDG-SWSによる高出力のBWOセクションの開発が当初の予定通り完了した。
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今後の研究の推進方策 |
R2年度の原理検証の結果,スタッガードダブルグレーティング遅波構造(SDG-SWS)は予想を上回る高出力発振を示しており,当初の構想であるTWT-BWO連結方式にせずとも,BWO単体により100GHz,Wレベルの発振が実現できる可能性が出てきた。電子の相互作用領域を増やした新構造SDGに対して3次元電磁波解析による計算による確認ののち,予備的な実験を行った結果,有意な出力向上が見られている。従って,当初の計画を一部変更し,TWTセクション開発の前に,SDGとその派生構造によるBWOセクションの高出力化を3次元電磁波解析ソフトウェアを用いて系統的に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
R2年度購入予定のパワーメータを中古市場より運良く格安で入手できたため,予定していた購入金額との差額を次年度使用額として計上した。R3年度は新型コロナウイルス感染防止により,製作した遅波構造の精密な試験のため出張(福井大遠赤センター)が必須となる実験検証を効率よく進められないと予想される。従って,3次元電磁波解析ソフトウェアによるシミュレーション研究を中心に進める計画に変更した。次年度使用額をこのソフトウェア購入の一部に充当する。
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