研究課題/領域番号 |
20K04618
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
中村 誠 岐阜大学, 工学部, 教授 (10708605)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光パケット伝送 / マルチレート / 光受信回路 |
研究実績の概要 |
情報流通プラットフォームの実現において光パケット伝送システムは不可欠な基盤技術で、柔軟で効率の良い通信システム構築には伝送速度が異なるパケット信号を扱うマルチレート化が重要な課題である。本研究はマルチレート光パケット伝送の効率化に向けてパケット応答時間を 飛躍的に改善することを目的とし、前年度行ったマルチレートに対応した光パケット受信回路構成法ならびに高速ディジタル制御技術の基本検討をもとに、回路の詳細検討ならびに高機能化の検討を行った。 具体的には、令和2年度に基本検討を行った、①帯域・利得切替信号による高速応答技術、ならびに②歪補償制御の高速応答技術について、回路構成技術の詳細検討を行い、これら技術を組み込んだ光受信回路について、集積回路化を想定したレイアウト設計・試作を行った。特に、歪補償については、TIA回路で検討したトリプルレートに対応できるよう回路検討を行った。また、③特性マッピングを用いたディジタル制御技術については、令和2年度に行ったFPGA(書換可能論理LSI)と自作回路による自動利得制御の高速応答の基本的な機能検証をベースとして、自動利得制御機構を構築し制御方法の詳細検討を行った。さらに、マルチレートに対応したより複雑な特性マッピングによるディジタル制御技術の考案を行い、FPGAを用いた基本動作検証を行った。 これらの成果の一部をまとめ学会発表を行った。また、IC試作結果については、今後、詳細評価を行うとともに、学会発表を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では令和3年度は、令和2年度に行った基本的な検討をもとに、基本的な動作検証と、動作検証をベースとした高機能化検討の位置づけで、①帯域・利得切替信号による高速応答技術、②歪補償制御の高速応答技術、③特性マッピングを用いたディジタル制御技術の詳細検討と動作検証、ならびに高機能化の検討を行った。 具体的には、①の帯域・利得切替信号による高速応答技術については、前年度、回路シミュレーションにより基本動作確認を行った 1.25 Gb/s、10 Gb/s、25 Gb/s(Duo Binary 符号)のトリプルレート対応TIAについて、自動で速度判別を行い帯域・利得制御を行う制御回路の考案を行った。集積回路(IC)を想定しレイアウト設計を行い、これをもとに寄生成分等を抽出した実際のIC動作を想定した回路動作解析を行い、自動制御による帯域切り替え動作を確認することができた。この結果をもとに、IC試作を行った。②の歪補償制御の高速応答技術については、前年度に基本検討を行った高速利得可変回路をベースにして、TIAと同様にトリプルレート化の検討を行った。従来は、速度毎に回路を用意していたものを帯域切り替え技術を取り入れ、一つの回路でトリプルレート対応とし、消費電力を従来の 1/2 に削減可能な見通しを得た。③の特性マッピングを用いたディジタル制御技術については、前年度に行ったFPGA(書換可能論理LSI)と自作回路による自動利得制御の高速応答の基本的な機能検証をベースとして、マルチレートのバースト信号に対応したより複雑な特性マッピングによるディジタル制御技術の考案を行った。自作回路の動作速度限界のため、デチューンした 10 kb/s、100 kb/s の複数バーストパケット信号で動作検証を行い、2 bit で速度切替可能な高速制御の基本特性を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は前年度行った、①帯域・利得切替信号による高速応答技術、②歪補償制御の高速応答技術、③特性マッピングを用いたディジタル制御技術に関する詳細検討の結果を受けて、詳細な動作検証ならびに高機能化の検討を行う。 具体的には、令和3年度に詳細検討を行いIC試作を行った、①帯域・利得切替信号による高速応答技術、ならびに②歪補償制御の高速応答技術の検証回路について、動作検証を行い考案技術の有効性を検証する。さらに昨年度、歪補償制御技術でとりあげた高速化技術として注目されているPAM4符号で要求される線形性に着目した高機能制御技術について検討を行う。高い線形特性を実現するために、これまでに検討した自動利得制御に加えて、オフセット補償制御を導入する。二つのパラメータによる二重制御になるため、高速応答性と動作安定性の両立が可能な制御手法を検討する。また、③特性マッピングを用いたディジタル制御技術については、令和2年度にパケット信号対応の高速応答技術、令和3年度にマルチレート・パケット応答技術を考案し、FPGAと自作回路を用いて基本動作検証を行った。本年度は、これら特性マッピングを用いたディジタル制御技術の詳細動作検証を行う。さらにこれらの検証結果をもとに、複雑なパラメータ制御によるパケット伝送の高機能化の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度も、新型コロナウィルス感染症拡大のため、学会がオンライン開催となり旅費の支出がなかったことと予定していた学会発表への投稿ができなかったため次年度使用額が生じた。差額分は、令和4年度分の旅費、その他の支出分と合わせて学会参加費、旅費、論文掲載費にあてる。
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