研究実績の概要 |
Si基板上のCdTeエピタキシャル単結晶成長層を用いたX線、ガンマ線検出器の検出特性向上のため最重課題である検出器の暗電流低減に関する検討を行った。Si基板とCdTeの格子不整合により発生するミスフィット転位は界面付近だけではなく、貫通転位として成長層内まで伝播し、検出器の暗電流を増加させる。本年度は昨年度と引き続き成長層の低転位化のため以下の検討を行っのた。 CdTe層成長時に成長を複数回中断し、基板温度を成長温度より昇温と降温を繰り返し行う熱処理により転位の運動を促進させ、反応により転位の消滅を図った。ここでは、1回目の成長中断のタイミングは、その後の成長層の結晶性に大きく影響を与えることが確認した。低温早期層の成長に続き、350-400 oCの成長温度で1時間成長行った後、成長を中断して550 oCで熱処理を行い、再度450oCでCdTe成長を行った場合最も良好な結晶が得られることが確認した。ここでは成長中断と再成長を4回に繰り返し得られた成長層の転位密度は熱処理を行わない成長層に比べて1桁以上に減少することが分かった。また、この熱処理法を用いて作製した検出器の暗電流の低減も確認した。 さらに転位密度の低減法として、成長層に複数島状のパターンを形成し、高温アニール処理行う、PHP(patterned heteroepitaxial processing)法を検討行った。初めに、10μm程度の成長層表面に60 μm×60μmの正方形のパターン形成行い、熱処理を施した。ここでは熱処理条件として処理温度および処理回数の検討行い最適化を図った。処理温度550~600 oC,1回熱処理を行った試料の転位密度はパターンを形成せずに熱処理行った試料に比べてさらに低減できることが分かった。
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