研究実績の概要 |
今年度は、トラップ用レーザー光の波長を405nmから671nmに変更した。これは、従来の波長ではレーザー色素の光吸収により熱が発生し、その結果生じる利得媒質の対流が粒子のトラップ状態に影響を及ぼすためである。変更の結果、粒子を安定して補足することができた。エスミール(エタノール68%、水32%)を溶媒としたローダミン590溶液中に酸化チタン粒子(粒径250nm、体積充填率0.2、1.0%)を分散させた懸濁液を薄膜状(0.2mm厚)に形成したものを試料とした。その下面より波長671nm、光強度2, 15, 30mWのトラップレーザー光を40×、NA:0.5の対物レンズを通して連続照射した。トラップ点は2点、その間隔は15.7μmである。そして、試料上面より波長532nm、パルス幅10ns、パルスエネルギー 12μJの励起光を連続パルス照射した。その結果、トラップ光を照射すると体積充填率0.2%では蛍光発光のみの状態からレーザー発振状態に変化し、体積充填率1.0%では最大スパイク強度が約2倍上昇した。また、トラップ光強度が1点あたり7.5mWのとき最大のスパイク強度が得られた。 本研究全体を通して、光トラッピングを用いたランダムレーザーの実時間発振制御が可能であることを実証した。用いる微粒子の粒径・充填率、レーザー色素の種類、トラップ光の波長・強度・スポット径(対物レンズの倍率)・トラップ点数などを変化させ、最適な組み合わせを探索した。その結果、多くの場合、粒子を光トラッピングすると発光強度が高くなることが明らかとなった。これは、特定の領域に粒子が集中し、光散乱が増強されるためであると考えられる。ただし、トラップ光が強すぎると粒子が凝集しすぎることからレーザー発振には不利になる。 今後はトラップ点の数や配置、レーザー発振の時間的変化に着目し、本手法の有効性を明らかにしていく。
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