研究実績の概要 |
本研究は、テラヘルツ波による無線通信の実用化にとって重要となる「液晶アンテナ」に有望な液晶を「分子間相互作用に焦点を当て開発」することが目的である。 令和2年度は、分子間相互作用として、水素結合に焦点を絞り、分子構造を変えた水素結合液晶のテラヘルツ帯および可視光域での物性評価を行った。末端基がFの場合は、可視光およびテラヘルツ帯の物性に変化が確認された。特にFの位置が異なる、2-フルオロ安息香酸、3-フルオロ安息香酸、4-フルオロ安息香酸ではテラヘルツ帯での吸収係数、複屈折に差が確認され、末端基の位置が水素結合液晶の物性に影響を与えることが明らかになった。 令和3年度は、水素結合以外の分子間相互作用に基づく液晶に範囲を広げてテラヘルツ帯で物性評価を行った。電荷移動相互作用を示す5CB/MBBA混合液晶では、「混合比50%において屈折率の増大する」、「混合比25,75%において吸収係数が減少する」、「混合比25-75%では吸収異方性が大きく」傾向が明らかになった。以上の結果から、電子移動型相互作用はテラヘルツ帯での液晶の物性に比較的大きな影響を与えており、この相互作用を制御することで複屈折、損失が変化することが明らかになった。 令和4年度は、前年度までに得られた結果をもとに、液晶材料のTHz帯での性能向上を目指した。THz帯で損失特性が優れる水素結合液晶を中心に評価を進め、シクロヘキサン環が1つの場合に比べ、2つの場合に複屈折の増大の効果が見られた。 以上の結果から、分子間相互作用がTHz帯の複屈折および損失に影響を与える可能性が明らかになり、分子構造や液晶の混合比を変えることでTHz帯での性能を向上につながることが示された。
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