研究課題/領域番号 |
20K04627
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坪川 信 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 教授 (70595975)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光ファイバ / 光導波路 / 光プローブ / レーザー描画 / 光ビーム成型 |
研究実績の概要 |
初年度の2020年度は、COVID19の影響もあり、大学内でのオフラインのシミュレーション実験が停滞し、成果を論文など外部発表するまでに至らず、進捗の遅れが生じた。具体的な研究実績としては、まず、微細な光スポット形成を可能にするマイクロ光ファイバに関して、その特徴である高い複屈折性とモード伝搬特性に着目し、シミュレーションによりサブミクロン径での曲がりにおいても優れた偏波保持性能が得られることを実証し、シンポジウムにて発表した。引き続き、本来のターゲットである、光導波路から空間中へ射出される光ビームのナノサイズ光スポット形成に対して、微細な光導波路構造を変化させる方法でシュシュのビーム形状をシミュレーション評価した。残念ながら、当初期待したベッセルビーム、エアリービームに類似のパターンを出射する導波路構造の場合、サイズ縮小に伴いビーム径保持効果以上に回折によるビーム拡散の影響が強く表れてしまい、別な手法の検討が必要となった。関連研究を探索する中で、光ナノジェット技術に関するデバイス研究が改善策につながる可能性があると判断し、光ファイバや光導波路出射端側に、微細な直線/リング型グレーティングや屈折率傾斜を持つ多層レンズ/プレートなど多様な微細構造を埋め込む手法を従来の導波路構と組み合わせることを検討中である。これまでに試験的に組み合わせ構造で光ビームの評価を実施したところ、サブミクロンサイズの光スポット径が得られることに加えて、長い焦点深度(伝搬方向での回折効果の抑制)も制御の可能性が確認できている。現在、導波路構造とビーム形状の関連性についてデータの分析中であり、条件の最適化をもう少し進めた段階で、得られた成果をまとめて外部発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要欄記載の様に研究進捗はやや遅れているが、年度末頃より獲得したデータを解析中であり、近々外部発表に向けてまとめていく予定。 年度当初は、従来、我々が取り組んでいたナノサイズの光スポット形成を可能にする特殊な光ファイバ構造を出発点とし、伝搬特性(光損失や偏波保持特性など)を評価し、引き続き、その構造を一部変更した場合における空間への出射ビームパターンを調べた。予測通り、急激な光ビームの拡散が観測されたため、次に回折が抑制可能なベッセルビームやエアリービームの類似パターンを光る導波路中で発生させ、その出射後のビームを計算機シミュレーションで評価したところ、サブミクロンクラスのビーム径形成と伝搬での保持は困難であり、何らかの別な工夫が必要なことが分かった。その後、文献調査等を行い、光ナノジェット技術に関する光プローブ構造などを参考例として取り込み、以前の提案構造に加えて、出射端領域に新たに微細な導波路構造やレンズ構造を埋め込むことで、サブミクロンクラスでも光ビームの収束効果とスポット径維持効果が得られることが見いだせつつある。但し、現時点のシミュレーション結果では、周囲の拡散光存在でパワー効率が低い問題などが残されおり、今後、改善するために目的に応じた構造最適化が必要である。これに加えて、光導波路の構造最適化を進める中で、近年、話題となっている技術(インバースデザイン、あるいはトポロジー最適化と呼ばれる自動設計法)の利用が本課題の解決加速に有益と考えられるため、ワークステーションのパワーアップに加えて現行のパーッケージFDTDソフトウェアと連携できる自動設計のためのソフトウェア自作(MATLABなどによる)にも着手することとした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、極細径光ビームの出射および光スポット形成を目指し、これまで考案してきた特殊構造の光導波路とその出射端領域に回折格子などの微細パターンを付加した光プローブについてモデル構築とシミュレーション解析を行い、微細な射出光スポット形成、あるいは長い焦点深度を達成するための光プローブ構造、動作条件を導出する。成果は、随時、オープンにすることに努め、学術論文、国際会議外部発表に結び付けていく。並行して、より一般的に導波路の構造最適化問題を解決する手段になりうるインバースデザイン、あるいはトポロジー最適化と呼ばれる自動設計法を現在利用しているパッケージソフトのFDTD法やBeam伝搬法に新たに組み込むべく、ソフトウェア部分の自主作成を試みていく。 2022年度は、最終年度であり、前年度までの結果をベースとした光プローブをいくつかの異なる具体的なアプリケーションに向けて見直し検討することで、それらアプリケーションへの適用性を調べるとともに最適化構造を探ることを主眼として取り組む。ナノクラスからミリクラスのサイズと要求の異なる光プローブアプリケーションが対象である。並行検討するインバースデザイン法などの計算技術の適用が間に合えば、より多くの異種のアプリケーションに対するシミュレーション解析が容易になるはずである。研究期間を通して、成果は随時外部発していく。研究費用は、消耗品類に加え、ワークステーション関連備品およびソフトウェア環境の整備にあてることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響により、出張等がなくなり、旅費などがなかったこと及び消耗品類補充の支出をしなかったこと、さらにハードウェア物品が価格変化により、当初予定と異なったことにより、全体支出の不一致(若干の余り)が生じた。
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