研究課題/領域番号 |
20K04629
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
桑島 史欣 福井工業大学, 工学部, 准教授 (30342554)
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研究分担者 |
谷 正彦 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 教授 (00346181)
原口 雅宣 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (20198906)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レーザーカオス / THz波 / プラズモンアンテナ / モードホップ / 同時性 / ダウンコンバート |
研究実績の概要 |
安価で、高安定で、小型軽量なテラヘルツ(THz)発生検出器を構築するために、市販の半導体レザー(100円程度)を用い、これをカオス発振させることにより、THz時間領域分光方法を研究してきた。通常の連続波(CW)レーザー励起に比べ、カオス発振させたときにTHz波が安定に発生する理由を探究するために、レーザーの縦モードがカオス光において同時発振しているか(モードの同時性とカオスの関連)を調査することを目的としている。 レーザーの縦モード間の光ビート(44GHz程度の整数倍、今回は88GHz程度を使用)と逓倍器によるテラヘルツ波をカリフォルニア大にあるプラズモンアンテナ中で混合し、1GHz程度の差周波を発生させ、RF領域にダウンコンバートすることにより、光ビートの安定性を確認する共同研究を行い、論文(F. Kuwashima, M. Jarrahi, et. al., "Evaluation of High-Stability Optical Beats in Laser Chaos by Plasmonic Photomixing", Optics Express, 28, 24833-24844, 2020)を公表した。この研究では、RFスペクトルアナライザーを用い、掃引速度を変化し、光ビートの安定性の時定数を探究した。通常のCWレーザーの場合は、間欠的なモードホップにより、掃引の時定数によらず、変動が起きるのに対し、レーザーカオス光では、RFスペクトルアナライザの最速の掃引速度である0.1msオーダー (50msの掃引速度で601点)の時定数まで常に信号が安定していた。この結果、0.1mまでの時定数の範囲では、モードが同時に発生し、光ビートが安定することが実証された。この結果、レーザーカオス光を用いた方法は、低価格なTHz分光器などに最適なシステムであることが実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カリフォルニア大との共同研究において、0.1msまでの時定数における光ビートの安定性を実証し論文化も行った。しかし、コロナの影響で全体に計画が遅れた。福井工大にRF領域にダウンコンバートするシステム構築のため、高周波発振器の購入は行った。しかし、購入希望の周波数逓倍器のメーカが他社に買収され、商品の販売がなくなったため、購入できなかった。他社も調査したが、購入価格が2倍以上となるため、2020年度の予算で購入できないため、2021年度の予算も併せて購入予定である。現在機種の選定中である。逓倍器を購入し、今後実験系を作成してゆく。
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今後の研究の推進方策 |
逓倍器を購入し、福井工大にもダウンコンバートする系を作成する。最初は、通常の光伝導アンテナを用い実験を行う。同時に、プラズモンアンテナの設計を行い、SI-GaAsに試作機を徳島大学で作成し、福井大学でフェムト秒レーザーを用い評価を行う。様々なパターンを試し、最適なパタンがわかったところで、低温成長GaAs上にアンテナパターンを制作し、福井工大のシステムに組みこみ。カオス光励起での性能評価を行う。 上記のシステムが完成したところで、デジタルオシロスコープでも観測し、さらに高速度での同時性を観測する。この時、1GHz付近の信号以外のノイズが大きいため、フィルターを設計作成し、他のノイズ成分をカットする。 また理論計算も行い、実験と理論の両面から、レーザーカオスにおけるモードの同時性を実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の逓倍器のメーカが買収され、購入できなかった。他社を探したが2倍以上であっただので、次年度の予算と合計して購入するため。
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