赤外線領域における反射フィルタの開発について当初の研究計画において予定していた紫外線照射用光源(UV-LED)と、分光透過率測定系を融合したシステムの設計と構築をこれまでに行ってきた。昨年度は、このシステムを用いて紫外線(UV)照射エネルギー量や照射方向等の実験条件を変化させた場合についてデバイス作製を試みてきた。カイラル材とモノマー材料を添加したネマチック液晶材料における分光透過率測定では、950~1050nm程度の領域に初期の選択反射帯域が存在していた。この材料にUV照射を行うことで、選択反射帯域が短波長側にシフトしながら拡がっていくことが、UV照射を実施しながらのリアルタイムの分光測定によって明らかとなった。UV照射エネルギーと照射方向の実験条件を様々に変化させることでこの帯域幅は大きく変化し、初期の場合に比べて倍以上の帯域幅が得られることが確認できた。このようなシステムを活用した実験を通じて、分光透過率の選択反射帯域幅の大きさと紫外線照射エネルギー量との関係を定量的に明らかにすることができた。 研究機関全体を通じては、赤外線反射フィルタの作製と評価のための光学システムの構築を行うことで、デバイス開発のために必要なUV照射条件に関する情報のリアルタイムでの取得が可能となった。この結果、デバイスの効率的な作製と評価のための成果へとつながった。さらに、レーザの空間的強度分布を制御した光散乱照射をネマチック液晶とモノマー材料からなる複合体材料へ行うと、デバイス内部の液晶・高分子ネットワークの微細な構造制御が可能となり、温度変化に対する調光特性が顕著に変化することを新たに確認することが出来た。 以上のような、赤外線反射帯域変化と温度特性に関する知見に基づき、感温型赤外線反射フィルタの自律的制御機能開発に有効な研究成果を得ることが出来たと考える。
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