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2021 年度 実施状況報告書

ホール輸送用ファイバーを正孔輸送層に用いて高効率フレキシブル太陽電池を創る

研究課題

研究課題/領域番号 20K04633
研究機関宇部工業高等専門学校

研究代表者

成島 和男  宇部工業高等専門学校, 電気工学科, 准教授 (40303531)

研究分担者 岡本 昌幸  宇部工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (70314820)
服部 勝己  宇部工業高等専門学校, 一般科, 准教授 (90249847)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード有機半導体 / 太陽電池 / 量子化学計算 / 電子雲 / 電荷分布 / 開放電圧 / 短絡電流
研究実績の概要

我々は、有機半導体を用いた太陽電池の理論的、実験的研究を継続して行っている。これまで理論的研究では、量子化学計算ソフト Gaussian 09, 16を用いて、有機半導体分子の電子状態の計算を行ってきた。その結果、フタロシアニンとフラーレンC60からなる系において、基底状態において、pn、2分子間では相互作用がみられ、電子雲や電荷分布が変化していることが分かった。また励起状態では、電子が励起されていることが計算機実験においても確認でき、これらの結果から伝導電子と正孔が発生していることが明らかになった。また、導電性高分子P3HTとC60間においても電子が励起している様子がみられた。導電性高分子PEDOT:PSSとC60からなる系についても電荷分布の変化がみられ、伝導電子の発生が示唆される。これは、フタロシアニンとC60からなる光電変換層に加えて、光電変換層と、PEDOT:PSSとC60からなる正孔輸送層の界面、においても電流の発生があることを意味する。
これらの知見をもとに、一貫蒸着法を考案し、フタロシアニン―フラーレン系の太陽電池を作製し、最高で光電変換効率3%の太陽電池を得た。また、PEDOT:PSS-C60系の太陽電池においても光照射時に開放電圧と短絡電流の発生が観測された。さらにPEDOT:PSSを正孔輸送層に用いたフタロシアニン―フラーレン系の太陽電池においても同様な結果を得た。
本申請は、有機半導体太陽電池中の正孔輸送層や電子輸送層に工夫を凝らし、光電変換効率を上げること、さらに量子化学計算を用いて、発電原理の詳細を明し、その知見を用いて変換効率の増加を試みることを目的としている。
最後に、私、成島は、以前から知財教育研究を進めており、有機半導体太陽電池の測定回路を調査した。現在、調査結果を踏まえて有機半導体太陽電池の測定回路を作製中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題は、有機半導体太陽電池中の正孔輸送層の形状を工夫し、正孔の流れをスムーズにし、光電反感効率を上げることが目的の一つである。
一昨年度は、スピンコーター装置を貴申請により購入し、導電性高分子PEDOT:PSS膜の作製に成功した。昨年度は、光活性層、電子輸送層作製用の真空蒸着装置に膜厚モニターを貴申請により購入し、取り付けることができた。これらを使用して有機半導体を用いた太陽電池を作製したところ、素子の歩留まりが飛躍的に上昇し、安定して太陽電池素子の開放電圧や短絡電流を得ることができた。
理論的研究の面においても、量子化学計算から、光電変換層と、PEDOT:PSSとC60からなる正孔輸送層の界面でにおいても電流の発生がある可能性を見出すことができた。
以上より、現在のところ、おおむね順調に進展している、といえる。

今後の研究の推進方策

本年度は、貴申請で取り付けた膜厚モニターを積極的に活用することにより、光活性層、電子輸送層を最適な膜厚や製膜レートにコントロールすることにより、光活性層作製による光吸収率の増大、並びに、電子輸送層の高結晶化による伝導電子の輸送性の向上を図り、光電変換効率を増大する。また、正孔輸送層の形状工夫によるシミュレーションは、引き続き服部准教授、高崎准教授に進めていただく予定である。
シミュレーションについては、私、成島が量子化学計算と有限要素計算をさらに進める予定である。量分子の配列の違いによる電荷分布・電子雲の変化を引き続き調査・考察し、全国大会に発表後、査読付き投稿論文に投稿する。
有機半導体太陽電池の測定装置については、引き続き、本校、岡本教授を中心に進めていただく予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、本年度はコロナ禍のため、予定していた国際会議発表を中止し、かつ、国内学会発表や研究打ち合わせのほとんどをリモート形式で参加したためである。このため、旅費の支出がゼロとなっている。
令和4年度においては、国内学会発表や研究打ち合わせに使用するとともに、デジタルマルチメータなど、本研究に必須な物品費の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] 企業での知的財産活動経験に基づいた 高専における知財実践教育の事例研究2022

    • 著者名/発表者名
      茂 野 交 市、成 島 和 男
    • 雑誌名

      工学研究

      巻: 70 ページ: 157-161

    • 査読あり
  • [学会発表] 正孔・電子輸送層を改良した有機半導体太陽電池の作製と理論回析2022

    • 著者名/発表者名
      原岡壮馬、國吉拓翔、藤澤聖人、成島和男、伊崎昌伸
    • 学会等名
      (豊橋技科大)先進的技術シンポジウムATS2021
  • [学会発表] 学生の知財制度の先行調査を踏まえた 高専の一研究室における知財教育の試み2021

    • 著者名/発表者名
      成島和男
    • 学会等名
      日本知財学会 第55回知財教育研究会
  • [学会発表] 導電性高分子を構成するモノマーとフラーレンC60分子間における電子物性の解明2021

    • 著者名/発表者名
      原岡壮馬、中村潤之介、成島和男
    • 学会等名
      日本コンピュータ化学会2021年秋季年会
  • [学会発表] 量子化学計算による導電性高分子-フラーレンC60系における電子物性の解明2021

    • 著者名/発表者名
      原岡壮馬,中村潤之介 ,坂本竜将,成島和男
    • 学会等名
      繊維学会 2021年秋季研究発表会
  • [学会発表] 高等専門学校における卒業研究と 知財教育の融合の試み2021

    • 著者名/発表者名
      成島和男、岡本昌幸
    • 学会等名
      日本知財学会 第19回年次学術研究発表会
  • [学会発表] 導電性高分子を加えた新規有機半導体太陽電池のキャリア機構の調査と製作2021

    • 著者名/発表者名
      原岡壮馬、國吉拓翔、藤澤聖人、成島和男
    • 学会等名
      第11回高専-TUT 太陽電池合同シンポジウム & 防災・減災(エネルギー)シンポジウム

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公開日: 2024-12-25  

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