研究課題
本研究では、モードサイズ10μmのエレファントカプラを実現することを目的としエレファントカプラ作製のコア技術であるIIB技術の革新を目指した。シミュレーションによるとモードサイズ10μmを実現するためには立体湾曲部の曲率半径が10μm程度、先端の直線テーパー部の長さが15μm程度の形状を実現する必要がある事がわかっていた。しかし、これまでのIIBでは先端テーパー部を直線に保ったまま立体湾曲部を形成することが難しく、新たな技術の開拓が必要であった。本研究では新たな観点として、(1)イオン注入角度と湾曲効果の関係、(2)カバー層の導入、(3)部分的薄膜化という3つのアプローチを検討した。1年目はその中から最も簡便な(1)の実現方法について重点的に取り組み、その結果、(知財に関するのでイオン注入条件の詳細は省略するが)イオン注入角度を上手く選択することで、加工の自由度が格段に上がり、手法(1)だけでも所望の光学特性が得られる構造を実現できることがわかった。2年目にはこの手法の確立を目指しイオン注入の角度・ドーズ・エネルギー等の各種パラメータを立体湾曲加工過程でどの様に組み合わせると所望の形状に成りやすいかを、実用化を念頭になるべく少ない工程数で実現するための実験を進めた。最終年度には光スイッチが搭載されたシリコン光集積回路に新開発のエレファントカプラを融合する試作を実施した。本研究により、IIB技術はイオン注入の「角度」というパラメータ導入により加工自由度が格段に上がり、デポ・リソ・エッチングを要する「カバー層の導入」や「部分的薄膜化」といった込入った製造工程を追加しなくとも所望のエレファントカプラを形成することに使えることを見出した。これはエレファントカプラを搭載するシリコン光集積回路への制約が新たに生じないことを示唆し、本技術が幅広い応用に展開可能であることを示している。
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