半導体量子ビット設計に活用できる実用的な設計シミュレータの実現に向けて、今年度は最後の課題であった「2量子ドット系の電荷安定図」のシミュレーション機能の開発に取り組んだ。大規模なデバイス構造に対応させるために、量子ドット領域を非等間隔なメッシュで扱うための手法を新しく導入しながら、昨年度までに開発していた「1量子ドット系の電荷安定図解析」を拡張する形で開発を進めた。また、シミュレーション結果の定量的な精度向上に向けて、量子ドットに閉じ込められる電子の交換相関相互作用を考慮した解析方法も導入した。様々なデバイス寸法、電圧条件におけるテスト計算を行い、先行研究で報告されているようなゲート電圧操作によるドット間結合の制御がシミュレーションにおいても再現できる事を確認した。 昨年度までに開発した「1量子ビット系の単電子輸送」、「1量子ビット系の電荷安定図」、「1量子ビットゲート&2量子ビットゲート操作」のシミュレーション機能に、本年度開発した「2量子ビット系の電荷安定図」シミュレーション機能を追加する事で、半導体量子コンピュータの基本単位構造である半導体量子ビット設計に最低限必要な機能を全て完成する事ができた。本年度はこれらの機能を用いたシミュレーションを行いながら、実験チームと今後試作する量子ビットデバイスの構造案について議論した。また、これまでのシミュレーション技術をまとめ、国内外の研究会において発表した。
|