材齢初期に、70℃以上の高温履歴を受けると、生成したエトリンガイトは分解する。供用時に外部から水が浸入してくると、エトリンガイトから分解していた硫酸イオン、アルミン酸組成物は反応して新たに、エトリンガイトを再生成する現象がDEFである。コンクリートはこれが原因となって膨張破壊する場合があり、 これがDEF膨張と呼ばれている。70℃以上の高温履歴を受けたすべてのコンクリートはDEF を起こすが、すべてのコンクリートはDEF膨張するとは限らない。ここでは、DEFとDEF膨張の関係について、どのような条件でDEF膨張が起こり、エトリンガイトの再生成と関係するのか、DEF が起こっている硬化体とDEF膨張が起こっている硬化体での硫酸イオンの移動、エトリンガイトの分布などを調べ、DEF膨張が起こる状況を明らかにする。DEFが起こる可能性のある限界温度70℃以上の温度で、早強セメントおよび普通セメントを用いた配合での、アルカリ量と硫酸塩量の許容値を把握するため、5年間の長期材齢での許容量を整理した。 DEF及びDEF膨張が骨材の種類により膨張時期が大きく変動する。特にスラグ細骨材を使用した場合にはこの傾向が強い。スラグ骨材を使用した場合に、長期材齢においても、DEF膨張量は少なくなっている。骨材界面でのスラグの反応相の形成が膨張量と何らかの関係がある。骨材周辺のエトリンガイトは、ペーストマトリックスで1次生成したエトリンガイトが消失し、2次生成したものであり、DEF膨張との関係は低いといわれていたが、本実験からも、DEF膨張に関係することがわかった。 代表者が遠隔地に転居せざるを得ず、従来の環境での研究ができなくなったため、期間延長等を含め転居先での研究継続方法を検討したが、実験設備等の研究環境の再構築ができず、研究継続が困難であると判断したため、研究課題の廃止を申請した。
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