従来、道路構造物に埋設された金属補強材の腐食状況の研究は、現地構造物から一部を取り出して行われていた。しかし、この方法は時間と費用を要し、交通にも支障をきたすため、新たな非破壊調査法が望まれていた。本研究では、金属補強材の腐食を磁性の変化で探る方法を提案し、その有効性を検証した。具体的には、金属補強材の腐食による磁性の変化を実験で調査し、磁性変化に伴う磁場の大きさの変化を非破壊の磁気探査法で検出する方法を模索した。 室内実験では、腐食促進剤の塗布と電気腐食の二つの方法で鉄板サンプルを腐食させ、その影響を比較した。磁化は誘導磁化と残留磁化の二つからなり、それぞれ帯磁率計とフラックスゲート磁力計で測定した。腐食促進剤を塗布した場合、腐食は鉄板サンプルの表面のみに留まり、有意な結果は得られなかった。一方、電気腐食の場合、腐食による体積減少に伴い、誘導磁化・残留磁化ともに減少する傾向が見られた。 屋外実験では、補強材を地中に0.5mから1mの深さで埋設し、地表から光ポンピング磁力計で磁場を測定した。その結果、補強材の両端付近に磁場の極値を確認することができ、補強材が永久磁石化していることが分かった。また、補強材を深く埋設するほど測定値の変化は小さくなる傾向が観察された。さらに、補強材を欠損させたり切断したりして腐食状態を再現し、これを地表に置いて磁場を測定したところ、欠損前と比較して測定値に変化が見られた。これにより、腐食により鉄板の体積が減少し、それに伴い磁化も減少することが確認できた。 最後に、実際の補強土壁の現場を模擬して、コンクリートパネル越しに補強材端部の磁場を測定し、コンクリートパネルの影響を受けずに測定が可能であることを確認した。以上の結果から、磁気探査法が金属補強材の非破壊調査に利用できる可能性が高いとの結論に至った。
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