研究課題/領域番号 |
20K04641
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋本 勝文 京都大学, 工学研究科, 特定講師 (30609748)
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研究分担者 |
張 凱淳 京都大学, 工学研究科, 講師 (50751723)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土木インフラ / 橋梁 / 固有振動 / モニタリング / MEMS / 振動発電 |
研究実績の概要 |
MEMS技術(Micro Electro Mechanical Systems)を用いた振動発電デバイスを鉄筋コンクリート床版に設置し,交通荷重の作用に伴う自由振動を静電誘導により電気エネルギーへ変換することで,構造条件および空間位置情報に応じた発電量が得られる.これに関して、検出される発電量から対象床版の固有振動数および振動モード等の振動挙動を推定するとともに剛性低下を伴う異常箇所の検知精度に関する評価を行ってきた.その結果,MEMS振動発電デバイスによる鉄筋コンクリート床版の健全状態および損傷発生箇所を検知できるセンシングシステムを構築した.以上より、FEM解析モデル内での弾性係数の低下を模擬したパネルを高い精度で検出可能であることを示した.なお、同システムを実際の高速道路橋より検出した振動データに基づいて健全性評価を行った結果と対象構造物から得られた健全性評価結果との整合性についても確認を行った.同時に、河川を横通過する橋梁の橋脚に振動発電デバイスを設置し、水流による生じる振動を静電誘導により電気エネルギーへ変換して得られる発電量から、固有振動数および振動モード等の振動挙動を推定することで橋脚の洗堀状態を把握する手法について検討した.特に,設置箇所や方向・数の等について振動発電デバイスの洗掘モニタリングとしての適用可能性を検証した.その結果、上記の発電量は上流側・中央・下流側に設置したデバイスからの出力は相互に5%以上の有意な発電量の差が発生することで,洗掘の発生を検知できる可能性を示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各年度の目的および検討項目は以下の通りである。 (R2年度)道路橋をはじめとするインフラ構造物を構成する部材および構造物全体の健全度を診断するための振動・変位データを実験的および解析的に取得する。 →FDD(Frequency Domain Decomposition)法およびFEM解析による評価 (R3年度)高効率振動発電デバイスの設計に対し,上記で取得した情報に基づき,自立電源で自己動作する無線通信および変位・振動情報発信デバイスを完成する。 →実装アプリケーションを想定と先進的デバイスの設計と導入仮説立案 【研究実績の概要】に示したように、橋梁を構成する部材および構造物の健全性診断のための実験的(橋梁原位置データ)かつ数値解析的な検討の結果が得られている.また、実施形態としての提案システムの稼働モデルを既に提案できている.
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今後の研究の推進方策 |
損傷程度や異常レベルの設定と検知精度について,実構造物での検証実験を進める予定である.実際の洗掘発生事例に基づくFEMモデルの高度化や実構造物における実際の振動環境下における適用可能性の検証が必要であると考えている.なお、R2年度およびR3年度の検討の範囲内においては、実験室内で実構造物および損傷・劣化を模擬したモデル橋梁を対象として、MEMS振動発電デバイスを活用した異常検知システムの検証について計画しているである.また、R4年度に実施予定の「常時型・突発型事象の発生と異常検知・アラート基準」については、対象の構造物および劣化・損傷の具体事例に合わせて今後データを収集していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
損傷を模擬したモデル橋梁およびトンネル照明灯具に対する振動計測実験の実施およびデータの取得について、共同研究者らの設備を利用することで、新たな試験体の製作費の必要が無くデータを取得することができたため、予定よりも経費を削減できた.しかしながら、また、昨年度(R2年度)においては、コロナ渦において現場計測を十分に行うことが出来なかったことも鑑みて、翌年度(R3年度)において実構造物を対象としたデータ取得の拡充に利用する計画である.
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