研究課題/領域番号 |
20K04644
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
須田 裕哉 琉球大学, 工学部, 助教 (10636195)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 相対湿度 / 空隙構造 / 水和物 / 炭酸化 / C-S-H / 炭酸化収縮 / ポルトランダイト / pH |
研究実績の概要 |
本研究では,異なる環境条件下におけるセメント系材料から生成される水和物の炭酸化挙動を明らかにすることを目的として,炭酸化時の相対湿度(43%,56%,66%,85%)を変化させた際のC-S-Hの構造変化と生成される炭酸カルシウムの生成起源に着目し,セメントペーストの巨視的な体積変化と液相のpH,気体の拡散性状を調査した. 炭酸化時の湿度が水和物の炭酸化挙動に及ぼす影響について,熱重量分析およびFT-IRを用いて検討を行った結果,炭酸化時の相対湿度が低いほど,C-S-Hの炭酸化がポルトランダイトよりも進行することを明らかにした.また,水和物の炭酸化挙動の違いから液相のpHの変化が湿度によって異なる結果を示した.これらは,相対湿度が高い85%では,炭酸化によりC-S-Hよりもポルトランダイトの溶解が進むため,pHが高く保たれるが,相対湿度43%,56%,66%の炭酸化では,ポルトランダイトが液相との平衡関係に大きく関与せず,C-S-Hの溶解が進行するため,pHが低下したものと考えられた.さらに,炭酸化後のセメントペーストの水蒸気吸着等温線および走査電子顕微鏡を用いた反射電子像観察から,C-S-Hの炭酸化が進行している供試体ほど,粗大な空隙が増加する結果を示した. 炭酸化したセメントペーストの気体の拡散係数,炭酸化収縮の測定から,炭酸化後の酸素の拡散係数の変化は炭酸化収縮ひずみと一定の関係を示した.相平衡計算によって評価されたC-S-HのCa/Si比と炭酸化収縮ひずみの関係は,材料や炭酸化時の相対湿度の違いによらずC-S-Hのシリカの平均鎖長の変化と一致し,微視的な構造変化が巨視的な炭酸化収縮に影響を及ぼしていることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭酸化時の相対湿度の違いにより,水和物の炭酸化挙動が異なることが明らかとなり,主要な水和物であるC-S-Hの炭酸化が液相のpHや炭酸化収縮,気体の拡散係数の変化に及ぼす影響が大きいことが示唆されたため,研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画では,モルタルやコンクリートを対象に炭酸化収縮による骨材界面の損傷に着目した検討を行う.さらに,実環境における雨掛かりの有無や暴露地域の環境の違いに着目し,暴露試験での長期的な炭酸化進行がセメント硬化体の組織構造や物質移動性状に及ぼす影響を調査する.特に,炭酸化時の湿度の影響が明らかになりつつあるため,促進中性化試験の物理化学的な理解を目指すとともに実環境との差異を明確にする.
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