研究課題/領域番号 |
20K04651
|
研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
井上 晋 大阪工業大学, 工学部, 教授 (30168447)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | プレテンションPC桁 / 火災 / 耐荷力 / 爆裂 / PC鋼材 / 最高受熱温度 |
研究実績の概要 |
本研究では,実橋を想定したプレテンションPC桁が火災を受けた場合,表層コンクリートの爆裂の深さ・範囲(加熱時間)と内部PC鋼材の最高受熱温度および残存強度の関係を明らかにし,その関係を用いて的確な残存耐荷力の評価を行うことを目的としている。 2020年度は,φ12.7㎜の7本よりPC鋼より線を埋め込んだ比較的小型のコンクリート供試体の加熱試験を行った。具体的には,爆裂により表層コンクリートがはく落した状態を模擬するために,かぶりを10~40㎜まで変化させた供試体を用いて加熱試験中のPC鋼材の受熱温度を測定し,かぶりと受熱温度の関係を求めるとともに,加熱試験後の供試体からPC鋼材を取り出し,残存強度を測定することにより受熱温度と残存強度の関係を考察した。また,次年度以降に加熱試験を実施するJISプレテンションPC桁の製作を行った。 小型供試体に対して,最高温度700℃,700℃までの目標加熱時間35分,最高温度保持時間20分の高温履歴を与えた場合,加熱開始後40分の時点での内部PC鋼材の受熱温度はかぶりが大きいほど小さく,かぶり40mmで82℃であったのに対してかぶり10mmでは135℃となった。また,加熱終了後の残存引張強度は,トータルの加熱時間が長くなったかぶり40mmの場合を除き,かぶりが小さくなるほど残存強度が低下する傾向が明確に認められ,最高受熱温度530~650℃の範囲では,受熱温度の上昇とともに残存引張強度が比例的に低下することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JISプレテンションPC桁の製作は予定通り終了し,2021年度の加熱試験に向けて屋内曝露中である。 小型供試体を用いた試験は最高温度700℃の場合のみの実施となったが,かぶりとPC鋼材の最高受熱温度の関係や最高受熱温度と残存強度の関係をおおよそ明らかにすることができたと考えている。ただし,桁の加熱試験を行う大型水平炉と小型供試体の加熱試験を実施した電気炉では加熱方式が異なることから,2021年度において同様の小型供試体を作製し,JISプレテンションPC桁と同条件とした大型水平炉での加熱試験を追加実施する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は小型供試体の追加加熱試験ならびにJISプレテンションPC桁の加熱試験を実施し,小型供試体による試験結果が大型の供試体(JISプレテンションPC桁)にそのまま反映できるかどうか,また,JISプレテンションPC桁の爆裂状況とPC鋼材の最高受熱温度・残存耐荷力の関係を実験・解析の両面から検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルスの影響により旅費を使用することができなかった。また,物品費の使用が当初の予定より若干少なくなった。差額については次年度以降の小型供試体の追加実験も含め,主として実験用消耗品の購入を考えている。
|