研究課題/領域番号 |
20K04652
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
窪田 諭 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (60527430)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 道路舗装管理 / 道路維持管理 / 集配車両 / センサ / 位置情報 / 地理空間情報 |
研究実績の概要 |
道路維持管理においては、道路パトロールにより日常的な損傷を発見し、補修することが多い。しかし、技術職員不足や道路老朽化の急速な進展により、その需要に対応できないため、道路損傷箇所を効率的かつ早期に発見することが求められる。 本研究では、道路舗装面の状況を効率的に収集し、損傷箇所を発見することを目的として、道路を日常的に利用する宅配便事業者の集配車両に加速度、GNSS(Global Navigation Satellite System)およびカメラのセンサ機器を取り付け、それらから収集するデータを組み合わせる同期技術を開発し、地理空間分析により道路損傷箇所を発見する技術を研究開発する。さらに、道路損傷箇所と内容を3次元地理空間データで可視化するシステムにより、維持管理情報の管理基盤を構築する。 本年度は、集配車両の実走によって収集された動画データと加速度データから舗装の損傷を見付け出す手法を考案し、データ分析によってその可能性と課題を示した。具体的には、上下加速度で閾値を超える揺れを確認し、その時刻のGNSSと動画データを基に損傷を判断した。その結果、損傷レベル中・大では適合率が80%を超え、過剰な損傷の抽出が少ないため、損傷の可能性がある箇所を見つける一次スクリーニングに使用できると考える。 また、市販のビデオカメラを車の前方に取り付けて路面と周辺の道路構造物を撮影し、その位置情報付きの映像を三次元可視化ソフトにて表示するシステムを開発した。道路管理者が、苦情発生箇所の状況確認、損傷箇所の登録や注視すべき点の指摘などを行うとともに、知識の引き継ぎを図ることを目指した。 さらに、センシングデータから抽出した道路損傷の位置や内容を管理する基盤とする3次元データの構築を開始し、地上型レーザスキャナを用いた道路舗装と構造物の計測とデータ処理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、宅配便事業者の実務における集配車両の実走によるセンサデータを用いて道路損傷発見技術を開発した。そこでは、加速度データから上下加速度で閾値を超える揺れを確認し、その時刻のGNSSと動画データを基に損傷を判断するものである。ここでは、正負で1箇所ずつ閾値を仮設定し、目視で確認した動画から損傷の適合率と再現率を求め、それらの調和平均からF値を算出し、閾値を定めた。その結果、損傷レベル中・大では適合率が80%を超え、過剰な損傷の抽出が少ないことがわかったため、損傷の可能性がある箇所を見つける一次スクリーニングに使用できる可能性を見出した。これまでの研究により、車両によるセンサデータを用いて道路損傷を発見できる可能性と道路維持管理基準の設定の基礎資料を示した。 また、市販のビデオカメラを車の前方に取り付けて路面と周辺の道路構造物を撮影し、その位置情報付きの映像を三次元可視化ソフトにて表示するシステムを開発した。システムでは、映像データの撮影、映像データの結合、映像と地図の連動表示、および、異状内容の登録を機能として実装し、実験によって検証した。道路の目視確認を映像データで行うことにより、確認までの時間短縮を図ること、道路巡回の疑似体験を映像によって行い、職員が同じ映像を確認して注視すべき点を指摘し、業務知識の引き継ぎを行うこと、および、苦情箇所の現地状況の確認を映像で行い、より早く状況を確認することを示し、道路舗装管理への実装の可能性があることがわかった。 さらに、センシングデータから抽出した道路損傷の位置や内容を管理する基盤とする3次元データの構築を開始し、地上型レーザスキャナを用いた道路舗装と構造物の計測とデータ処理を行うとともに、データ更新手法を検討した。 以上より、本研究は当初計画どおりおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、集配車両によるセンシングデータから抽出した道路損傷の位置や内容を管理する基盤とする3次元データの構築技術を確立する。3次元データの構築には、地上型レーザスキャナ、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)とカメラを用い、3次元点群データの計測と処理を行うとともに、近年オープンデータとして地方公共団体から公開されつつある3次元点群データを活用する。そして、本研究成果の長期運用を見据えて、3次元データの更新手法について検討する。そこでは、オープンデータやMMS(Mobile Mapping System)によって整備された3次元データを地上型レーザスキャナとカメラによって部分的に精緻に更新する手法を実践的に明らかにする。3次元データの構築・更新技術により、3次元データによるセンシングデータ管理基盤を構築する。 さらに、道路損傷発見技術により抽出する事象、位置及び画像を管理し、道路管理者が効率的かつ高品質で確認するために、道路維持管理情報の管理基盤となる情報システムを開発する。システムは、3次元データを基盤とし、3次元データに共通する機能と道路維持管理に特化する機能により構成する。最後に、実現場にて道路損傷発見技術と道路維持管理情報システムを評価し、目標達成度を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度には、コロナ禍のために国際会議や国内学会がオンライン開催となり、旅費の使用計画が少なくなったため、次年度使用額が生じた。 最終年度には、大規模なセンシングデータを処理し、道路損傷を見付け出す技術開発を進めるために、システム開発・運用のためのPCと、データを可視化するためのソフトウェアを購入する。大規模データの処理や解析には、学生謝金を使用する。また、研究フィールドでのデータ取得や計測、および研究成果をアウトリーチするための学会発表のための旅費として使用する計画である。
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