令和4年度は,令和2年度に曝露を開始した砂中,石中および海水中に埋設した鋼材の分極抵抗,自然電位などの電気化学的パラメータを,曝露試験を通じて計測した.その結果,自然電位としては,経過時間に対する変化は小さく,曝露条件(砂,石)の違いは確認されなかった.全体的に海水中より砂中および石中の場合の方が自然電位は低い結果となった.分極抵抗から算出した腐食速度としては,曝露初期に一度上昇し,その後低下する傾向が確認された.ただし,砂の場合で,下部に設置した場合は,大きな腐食速度の上昇は確認されなかった.この原因としては,年度を通じた温度の変化に伴い分極抵抗が変化したこと,砂の場合には下部における酸素量が低下したことなどが想定される.何れの結果(自然電位,腐食速度)に関しても,埋戻し材を砂,あるいは石としても顕著な差異は確認されなかった.一方で,海水中での腐食と比較した場合,酸素の供給や海水の循環がしにくい深部においては,腐食速度が若干低い傾向が確認されたが,上部(表面から5㎝程度の位置)では,水中と同程度の速い腐食速度となる場合もあった.以上の結果から,土中鋼材の腐食は,酸素の影響を強く受けると考えられ,酸素を低減することにより腐食を抑制できることが考えられた。 一方で,土と粘土の間に位置するパイプラインなどの地下鋼材の腐食について検討した。粘土中の鋼材は、酸素透過性の変化によりマクロセル腐食が発生する傾向があった。このことは、自然電位や分極抵抗等の電気化学的測定値から説明される。このような土中鋼の腐食を防止するために、土中鋼材管にある抵抗を検討する必要がある。このため、本研究では、地下鋼材の局部腐食を防止するための技術を検討した。その結果、酸素還元剤の使用は、局所的な腐食の防止に有効であると考えられた。
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