研究課題/領域番号 |
20K04658
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
後藤 文彦 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (10261596)
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研究分担者 |
佐々木 貴信 北海道大学, 農学研究院, 教授 (00279514)
野田 龍 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 准教授 (00626955)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プレストレス木箱桁橋 / オンサイト木橋 / 緊張材 / PC鋼棒 / 繊維補強ロッド / CLTパネル |
研究実績の概要 |
2021年度は、PC鋼棒による横締めを行わないオンサイト木橋の新しい形式についての検討を行った。これまで、角材の横締めにより構成されていたボックス桁の上下フランジ部を、CLTパネルで代替する構造についてFEMモデルによる検討を行った。これは上下に配置したCLTパネルを2つの鋼I桁にボルトで接合し、ボックス桁を構成する新しいモデルである。CLTパネルは、強軸、弱軸2方向の曲げに対してそれぞれある程度の剛性を有するものの、仮に強軸方向を通常 床版として使用される際の幅員方向ではなく、橋軸方向の剛性を高めるように橋軸方向に向けたとしても、角材の軸方向の剛性の半分程度の剛性しか有さない。このため、CLTパネルを用いたモデルをボックス桁として構成した場合に、従来型の角材を横締めするタイプのオンサイト木橋と同程度の断面性能を有するかどうかについて、3次元有限要素モデルにより検討を行った。その結果、従来の角材を横締めするタイプと同程度の大きさの断面で構成した場合、CLTパネルを用いたモデルでは、剛性はわずかに低下するものの、CLTパネルの強軸方向を橋軸方向に配置するならば、従来タイプと比較してそれほど遜色のない結果が得られた。このことから、今回のCLTパネルを用いたモデルは、オンサイト木橋を構成する木・鋼ハイブリッド断面によるボックス桁構造として、PC鋼棒による横締めを用いない有力な代替候補となる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PC鋼棒による横締めを伴う角材の代わりにCLTパネルを上下に配置して2つの鋼I桁にボルトで接合した新しいタイプのボックス桁が、従来の角材を用いたタイプと同程度の断面で同程度の剛性を有すかについて、有限要素モデルを作成して解析を行った。CLTパネルの強軸を、床版として用いられる際の通常の向きである幅員方向に向けると、ボックス桁の剛性は従来タイプよりもかなり低下してしまうものの、強軸を橋軸に向けた場合には、従来タイプと同等の剛性が得られた。また、応力の分布等に関しても、特に従来タイプより厳しくなっているわけではないことが確認され、CLTパネルを用いたモデルも、基本的な剛性に関しては、従来タイプを十分に代替できる候補となると考えられる。ただし、CLT部および鋼I桁部それぞれの継ぎ手構造については、今後の検討が必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ、繊維補強ロッドがPC鋼棒を代替する横締め緊張材となること、また、横締めしない構造であれば、CLTパネルを上下に配置した新しいモデルが角材タイプの代替候補となり得ることなどが確認された。こうした新しい形式を実用化するには、木・鋼ハイブリッド断面の剛性を伝達できる継ぎ手を提案することが必要となり、これは木・鋼ハイブリッド断面を有する構造における共通の課題でもある。新型コロナウイルスの感染拡大により、2023年度に成果発表のために参加を予定していた国際会議が延期されたため、今年度はその予算の一部で、新たに木・鋼ハイブリッド断面の継ぎ手の解析やCLTパネルの床版としての性能評価、更には簡易な機器でオンサイト木橋の固有振動を測定する方法の検討等を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの感染拡大により、情報交換のための会議各種や成果発表のための学会各種がオンライン会議となり、予定していた旅費を消化できなかった。今年度は、対面会議の旅費や新たな解析モデル構築のための解析サーバーの購入のために使用することを計画している。
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