令和3年度は,修正ワイブル応力アプローチの適用によりシャルピー衝撃試験における構造用鋼材の脆性的破壊挙動の再現を検討し,SM570QとSM490YBに関してその適用性を示すことができた.令和4年度は,本研究の主題である高効率な修正ワイブル応力算定時の材料パラメータ同定法の構築に着手した.まずは小型供試体へのハンマーの質量,衝突速度をシャルピー衝撃試験と同様として,形状等をパラメータとした様々な供試体を対象とした衝撃実験結果から材料パラメータを同定する手法の構築を試みた.具体的には,様々な供試体に対する衝撃実験を非線形有限要素法により解析的に再現し,時々刻々と変化する修正ワイブル応力を解析結果と暫定の材料パラメータに基づき試算し,解析的に得た供試体の吸収エネルギーが実験における測定値に達した時点での修正ワイブル応力(限界修正ワイブル応力)が供試体形状等によらずほぼ一定値となる(修正ワイブル応力の定式化の前提を満足する)よう発見的に材料パラメータを同定する手法の構築を試みた.令和4年度における成果として,構築を目指す手法とは異なる同定法で材料パラメータを取得済みのSM570Qに関して上記の手続きを踏み(衝撃実験については既知の限界修正ワイブル応力を用いて解析的に吸収エネルギーを推定),その材料パラメータをおおよそ再同定可能な供試体形状の決定に至った.具体的には修正ワイブル応力算定に用いる材料パラメータが既知のSM570Q材を用いた供試体における切欠きの深さや形状を変化させ,これらの供試体を-80℃と-60℃の下で行った衝撃実験を限界修正ワイブル応力を用いて解析的に再現し,その解析結果から別手法で既知の材料パラメータを再同定可能であるかを検討し,妥当な精度で再同定できる供試体形状を発見することができた.
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