• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

損傷した石造アーチ橋の崩壊機構の解明と文化財価値を考慮した補修・補強方法の提案

研究課題

研究課題/領域番号 20K04665
研究機関熊本大学

研究代表者

山尾 敏孝  熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 名誉教授 (40109674)

研究分担者 森山 仁志  徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (50825495)
岩坪 要  熊本高等専門学校, 生産システム工学系ACグループ, 教授 (60290839)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード構造工学・地震工学 / 石造アーチ橋・石積み構造 / 数値解析 / 文化財 / 補修・補強
研究実績の概要

2022年度も上流側と下流側の壁石の連結,隣接壁石間の連結に適用する接着アンカー工法の開発に取り組んだ.これまでの実験結果より,石材のコーン状破壊と接着層の付着破壊が混合する場合の破壊モードに対する終局耐力推定式を考案した.また,付着破壊面は石材とエポキシ樹脂の材料強度の差に影響され,材料強度の小さい石材ではエポキシ樹脂―石材の境界面,材料強度が大きい石材ではエポキシ樹脂-アンカーの境界面で破壊することが確認された.今後は,母材と接着剤の材料強度の比率を考慮した推定式を検討し,推定精度の向上に試みる.
既存石造構造物に対するアンカー補強の効果を,コア抜き片を用いて推定する手法も検討した.これは,対象構造物と同一産地の別構造物からのサンプリングや新規石材からの作製によるコア片を突き合わせたアンカー連結部の3点曲げ試験を行い,対象構造物を損傷することなく補強効果を実験的に推定するものである.石材の材料特性については,密度・弾性波速度など非破壊的に計測した物理的性質と求めたい機械的性質を別途調べ,データベース化しておくことで,非破壊指標から間接的に推測することを考えている.
その他,壁石模型の振動実験の実験結果のとりまとめ,接着アンカー補強部の数値解析モデルの作成を行った.2023年度は,接着アンカー補強部の引抜実験に関する研究成果の公表,コア抜き片を用いた3点曲げ試験の研究成果の公表,接着アンカー補強部の数値解析の実施,壁石構造や石橋の数値解析の実施を行う予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和2年7月豪雨の発災および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受けて,当初計画より研究活動に遅れが生じたままである.数値解析の検討は,研究分担者の所属組織の異動や予算の制約を受け,2022年度末より実施した.
一方で2022年度よりは,接着アンカー工法により補強した石材の終局耐力評価式の検討,コア抜き片と非破壊指標を用いた既存石造構造物の材料特性および補強効果の推定手法の検討には取組んできた.したがって,要素実験については進捗していると判断する.
石橋の振動実験は2022年度より開始できており,壁石の孕みだし挙動,中詰め材の種類が石造アーチ橋の崩壊機構に及ぼす影響を検討中である.
以上を踏まえ,本研究の進捗は「やや遅れている」と判断する.

今後の研究の推進方策

本研究の目的は,①損傷劣化した石造アーチ橋の耐荷力と崩壊機構の解明すること,②崩壊機構を踏まえた補修・補強工法を,当時技術のみを用いる伝統的観点と現代工学を用いる近代的観点の両方から提案することである.
目的①については,中詰め材をパラメータとした壁石構造や石橋の振動実験,振動実験の再現解析,接触・摩擦バネのパラメータの同定,個別要素法や有限要素法を用いたパラメトリックスタディによる損傷程度・位置と耐荷力の関係の解明を行う.載荷実験は2022年度より開始した.再現解析・パラメトリックスタディは2022年度~2023年度で行う.
目的②については,近代的工法としてエポキシ樹脂と鋼棒による接着アンカー工法を考えており,2020年度は埋込長・孔径等の構造諸元をパラメータとした引抜実験,2021年度には石種をパラメータとした追加実験をそれぞれ行った.2022年度には補強後石材の終局耐力評価式および補強部の構造詳細の設計方針の検討,既設石造構造物の使用石材の特性および接着アンカー補強の効果を推定するための,コア抜き片を用いた性能評価試験方法にも取り組んだ.伝統的工法にはダボによる連結を考えており,石橋に使用可能な各種石材の性能試験(せん断試験等)やその数値解析を行うことで,ダボによる設計方法を確立する.
最後に,研究の総括として,伝統的・近代的工法により補修・補強した石橋模型の静的・動的載荷実験を行い,提案工法の効果を検証する.

次年度使用額が生じた理由

本研究の遂行に必須となる数値解析を行うため,昨年度と本年度の助成金を組み合わせ,解析ソフトウェアと年間ライセンスを購入することとしている.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Influence of Anchor Length and Drilled Hole on Mechanical Behaviour of Masonry Colum structures Strengthened with Bonded Anchor2022

    • 著者名/発表者名
      Daisuke SASAKI, Hitoshi MORIYAMA, Zice QIN and Masahide MATSUMURA
    • 雑誌名

      the IABSE Symposium Prague2022 Reports

      巻: - ページ: 1204-1211

    • 査読あり
  • [学会発表] 石造構造物を対象とした接着アンカーの引張耐力に関する実験的研究2023

    • 著者名/発表者名
      佐々木大輔,松村政秀,森山仁志,岩坪要,山尾敏孝
    • 学会等名
      第78回年次学術講演会
  • [学会発表] 石ブロック形状の変化による耐震性向上に関する振動実験2022

    • 著者名/発表者名
      岩坪要,石川龍星,森山仁志,山尾敏孝
    • 学会等名
      第77回年次学術講演会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi