地震時の過大なせん断変形による損傷や、交通振動などの経年による劣化によってゴム支承内部にはひび割れなどの欠陥が生じる。これらの欠陥を内在した状態で、再度地震などによる過大なせん断変形を受けると、そのひび割れに応力が集中して破断する可能性がある。ゴム支承の外観からこれらの損傷を評価することは極めて難しく、ゴム支承が絶縁体であるため電気化学的な評価も困難である。そこで、非破壊試験法の中でも弾性波を検出することで材料の損傷評価が可能なAE(アコースティックエミッション)法を利用して、ゴム支承内部の損傷を評価して、健全性評価指標を作製することを試みた。2022年度からゴム支承に与えるせん断変形に模擬地震波を導入し、同一供試体に複数回加振を繰り返した。その都度、AE法で非破壊的に評価した。模擬地震波によって変化するゴム支承の残存耐震性能を計算し、それらとAE法で得られる波形パラメータを比較して、健全性評価指標の構築を試みた。その結果、模擬地震波を複数回導入する毎に、等価減衰定数、等価剛性などの残存耐震性能の変化が確認できた。同時に、AE法ではパラメータの一つであるRMS値(連続型AE波形のAE発生率)、AEヒット数(検出した弾性波の数)が連動して増減することがわかった。数値解析では、健全なゴム支承と内部欠陥を設けたゴム支承の内部を伝搬して検出される弾性波を判定する手法の検討を進めた。その結果、教師学習を通じて内部欠陥を伝搬した弾性波を判定することが可能であることがわかった。
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